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塔の“エマ専用部屋”が勝手にアップグレードされた
朝、エマの部屋の扉を開けた瞬間、違和感があった。
「……あれ? なんか……広くなってない?」
窓の位置が変わり、家具が増え、ベッドも大きくなっている。
「リュカ――!!」
呼び名を叫ぶと、すぐに現れた。
「何か問題があるのか?」
「あるよ!! 昨日までこんな豪華じゃなかったよね!?」
「おまえが寝返りを打つたび布団が乱れていた。
落ちる可能性もあった。危険だ」
「危険って理由おかしくない!?」
リュカは平然と続ける。
「収納も増やした。おまえの道具や服が増えたときのためだ」
「増やす予定はそんなにないよ!?」
「今後増える」
「勝手に未来決めないで!」
だが、部屋の家具はどれもエマの好みに合わせた色で統一されていて、窓から入る朝の光がすごく綺麗だった。
(……悔しいけど、すごく居心地いい……)
そんな表情を見逃すほど、リュカは鈍くない。
「気に入ったか」
「……ちょっとだけ」
「十分だ」
静かなのに、どこか誇らしげな声。
胸が熱くなる。




