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塔の主からの“重い告白”
夜。
暖炉の前で本を読むエマの横に、リュカが静かに座る。
しばらく黙ったまま本を眺めていたが、
ふいに口を開いた。
「……エマ」
「うん?」
「言っておくべきことがある」
「な、なに……?」
紫の瞳がまっすぐ向けられる。
その視線は、どこまでも深く、逃げられないほど強い。
「おまえがいなくなったら……
俺はきっと、魔術師ではなくなる」
エマは息をのむ。
「魔法も、塔も、研究も、世界の理も……
おまえがいなければ、意味がない」
「リュカ……」
「エマが笑っていることだけが、俺のすべてだ」
こんなにも重く、真剣に、
誰かに必要とされたのは初めてだった。
胸が熱くなり、目がじんとする。
「……そんなふうに言われたら……
離れられなくなるよ?」
「離れさせない」
即答だった。
エマは笑ってしまう。
「私ね……リュカに愛されるの、嫌じゃない」
その瞬間、リュカの瞳が熱く揺れた。
「エマ」
「うん」
「おまえは俺の――唯一だ」
暖炉の火が優しく揺れ、
二人の影が寄り添うように重なった。




