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塔の廊下に“侵入者除け”の幻影が出るようになりました
ある日、塔の廊下でエマが歩いていると――
ガタガタガタッ!!
突然、壁から巨大な狼の幻影が飛び出した。
「ひゃああああああ!!?」
リュカがすぐに現れて腕を掴む。
「エマ! 大丈夫か?」
「な、なにあれ!? 怖すぎるんだけど!?」
「侵入者が来た時に追い払うための幻影だ」
「怖がらせる方向性やめて!?」
「おまえの知り合いが勝手に入らないようにした」
「私の知り合い少ないから大丈夫だよ!?」
「予防だ」
その幻影はエマには無害だが、他の誰かが来ると追い払うようになっているらしい。
完全に“エマのための結界”だ。
「……ここまでしてくれるのは、嬉しいけど」
「けど?」
「友達できないよ?」
「必要ない」
「リュカ、それはだめ!!」
それでも彼は恬淡と答える。
「おまえの交友関係は俺が管理する」
「いや怖いよ!?」
(でも、そんなふうに言われて……ちょっと胸が温かいの、なんで……?)




