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外の世界に興味を持つと、彼は途端に不機嫌になる
昼下がり。
塔の外の丘が見える窓辺で、エマはつい呟いた。
「この国以外にも、他の街や国があるんだよね……
いつか見てみたいな」
その瞬間。
「……どこに行く?」
低い声。
リュカが後ろに立っていた。
「いや、行きたいとは言ってないよ?
ただ、ちょっと興味あるってだけで――」
「“興味”が危険だ」
「考え方が極論!」
リュカはエマの腰を軽く抱き寄せ、窓から離す。
「外の世界は、汚れている」
「そんなこと言ったらこの国が全部汚いみたいに!」
「おまえの瞳には、不要だ」
「いや世界の広さ否定しないで!?」
だが、彼の声は真剣そのものだった。
「エマが外に出るなら……俺もすべて捨ててついていく」
「いやそこまでの覚悟いらないから!」
「離れるくらいなら、世界の方を壊す」
「壊さないで!?」
言葉は重く物騒。
でも、エマの胸は――震えるほど嬉しかった。




