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塔の図書室に“席指定”ができました
ある日の午前。
エマが読書しようと塔の図書室に向かうと――
いつも座っていた窓際の席に、
「エマ専用」
と魔法文字が浮いていた。
「……リュカぁぁぁ!?」
「俺だ」
「知ってるよ!!」
リュカは本を閉じ、平然と説明する。
「その席は光がよく入る。おまえが気に入っているのも知っている」
「いや、それは嬉しいよ? 嬉しいけど……」
「なら問題ない」
「問題しかないよ!? なんで“専用席”なの!」
「他の者が座る可能性を排除した」
ヤンデレあるあるの“物理的独占”が始まっている。
「……私の場所を作ってくれた、と思えば……ちょっと嬉しいけど」
「“ちょっと”では足りない」
「欲張り!?」
けれど専用席に座ると、窓の外の光がきらきら揺れて、
エマは本当にお気に入りの場所になってしまった。
(悔しいけど……いい場所なんだよなあ……)




