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魔術師の国で目を覚ます
まぶたを開けると、石造りの天井が見えた。
カーテン代わりの厚い布から漏れる光は、ほんのり紫がかっている。
外の空がそういう色なのだと、なぜか直感でわかった。
「ここ……どこ?」
体を起こすと、手が小さい。
いや、全体的に小さい。
鏡代わりの金属板に映ったのは、淡い栗色の髪を二つに結んだ少女だった。
「若返ってる!? ……え、かわいい、私?」
素直に驚いた自分に、ちょっと笑ってしまう。
頬をつねると、ちゃんと痛い。
部屋の扉がこんこんと叩かれた。
「エマ様、起きておいでですか?」
「エマ?」
自分の名前が、少し柔らかくなって呼ばれた。
「あ、はい! 起きてます!」
扉の向こうから、落ち着いた女性の声が答える。
「本日、塔の主様がお戻りです。お支度を」
塔の主。魔術師。
恵麻――
いや、エマの胸が、どくんと高鳴った。




