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魔薬の試飲は彼の腕の中で
魔法薬の勉強をしていた日。
エマは調合作業に集中しすぎて、少し強めの香りを吸い込んでしまった。
「……っ、なんか、くら……」
ふらついた瞬間――
「エマ!」
強い腕が支え、抱き寄せられる。
床に倒れる前に、リュカが素早く抱き上げていた。
「息は? 視界は? 頭は痛む?」
「だ、大丈夫……」
思考がぼんやりして、リュカの胸の温度だけがやけに心地いい。
「……リュカ」
「なんだ」
「すごい、あったかい」
「ひどい顔をしている」
「ひどいって……!」
「心配させた罰だ」
そう言って、彼はエマの額にそっと手を当てた。
魔力が流れ込み、じわりと頭が軽くなる。
「……今の、癒しの魔法?」
「違う。おまえの状態が知りたかっただけだ」
「いやそれ癒しより怖いよ!?」
でも――
こんなふうに抱きとめられるのは、嫌じゃない。




