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塔の“裏口”を封鎖しました
朝目を覚ますと、塔の裏庭にあった小さな扉が跡形もなく消えていた。
「えっ……裏口、どこ?」
「塞いだ」
リュカが当然のように答える。
「塞いだって……あそこ非常用の避難口じゃなかった!?」
「おまえが外へ出られてしまう」
「いや、そこ“私が出られちゃうから”で塞ぐの!?」
リュカはまったく悪びれない。
「非常時は転移で逃がす」
「転移できないときは?」
「俺が抱えて飛ぶ」
「飛ぶの!?」
「問題ない」
即答の自信。
(いや、問題しかない……)
エマは頭を抱えながらも、胸の奥がじんわり温かくなる。
“危険”より先に“エマの存在”が来る彼の思考が、嬉しくてたまらない。
ほんの少し、心がくすぐったい。




