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魔力暴走、そして抱きとめる腕
塔に戻ったあと。
魔力の実験をしていたエマは、操作を誤った。
「うわっ……!」
光が弾け、魔力が暴走しかける。
その瞬間――
「エマ!」
リュカの声が飛んだ。
激しい光の中で、エマは腕を引かれ、身体ごと抱き寄せられた。
光が弾けて消えたあと、リュカははっきりと震えていた。
「……危なかった」
「ご、ごめん……」
「謝るな。俺がもっと早く気づけば」
自分のせいにしようとしている。
「リュカ。私、無事だよ。ほら」
そっと手を握ると、リュカの指がぎゅっと絡む。
「……おまえが傷つくのは、もう嫌なんだ」
その声は、いつもの淡々とした声とは違った。
深くて、苦しくて、どうしようもないほど――
エマに向けられた感情そのものだった。
「……ありがとう」
エマがそう言うと、リュカはエマの額に軽く手を添えた。
「……無事でよかった」
静かな言葉が、胸に染み込んだ。




