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うっかり本音が口をつく
恵麻はごくりと唾を飲み込む。
心の奥では、さっきまで読んでいたヤンデレ小説たちが列をなして踊り狂っていた。
(こんな機会、一生に一度どころか二度目はないでしょ……!)
「じゃあ……」
二柱の視線が、ぴたりと自分に向く。
「や、ヤンデレ属性の魔術師に愛されたい!
……とかダメですかね?」
沈黙。
白い空間に、恵麻の言葉だけがこだました。
『……』
『……いいねそれ』
「いいの!?」
『魔術師ね、ヤンデレね、激重ね、把握。世界設定はファンタジーでいい?』
「え、えっと、はい。魔法とか、塔とか、ローブとか……」
『ほーい、じゃあ 1名様 ごあんなーい』
光の柱がぱっと弾ける。
『なお、ヤンデレの程度につきましては、当社比最大級となっております』
「ちょっと待って今の説明怖いんだけど!?」
恵麻の抗議は、光に飲み込まれて消えた。




