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魔法の実験、距離ゼロメートル
翌日。
「今日は新しい魔法の練習だ」
リュカの研究室に呼ばれたエマは、小さな魔法陣の前に立っていた。
「この中心に立て」
「えっ……せまッ!」
魔法陣は二人で立つには明らかに狭い。
にもかかわらず、リュカは何のためらいもなくその中へ入ってきた。
身体の距離、ゼロ。
「ちょ、近いです!」
「魔力の同期には近い方がいい」
「理屈はわかるけど限度が……!」
リュカの指先がエマの背中に触れ、
魔力の流れを整えるように滑る。
「ひゃっぁ…」
くすぐったさに思わず肩が跳ねた。
「怖くない」
「えっと……」
「俺が全部受ける。
おまえは、俺の魔力に身を預ければいい」
囁く声が落ちてくるたび、心臓が変なリズムで鳴る。
「……そんな言い方ずるいよ」
「ずるくていい。そうしないと、おまえはすぐどこかへ行きそうだ」
「行かないよ……!」
「なら、信じろ」
光が魔法陣から立ち上がり、二人を包み込む。




