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「笑うな、他のやつが見る」
市場へ行く日。
腕輪は外れないし、外出許可申請書も提出済み。
「今日は大丈夫……なはず」
エマがそう思った矢先だった。
小さな露店で、店主のおばあさんがにこにこしながら声をかけてくる。
「まあ、かわいいお嬢さんだねぇ」
「え、ありがとうございます!」
自然と笑顔になってしまう。
その瞬間、背後の空気が冷えた。
「エマ」
「ひっ……はい」
「笑うな」
「え、なんで!?」
「他の者が見る」
……ヤンデレ度、加速してない?
「笑うのは俺にだけ」
低く囁かれ、エマの心臓は跳ね上がった。
「そ、それじゃあ私、人前で笑えないじゃないですか……」
「構わない。俺が見ている」
「なんか監視の宣言みたいになってるよ!?」
おばあさんにまで「仲がいいねえ」と言われ、エマは変な汗をかいた。




