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嫉妬という名の炎
市場の喧騒の中、エマは薬草屋の店員の笑顔にほっとしていた。
「この乾燥ミント、おすすめですよ」
「わあ、いい香り……」
店員の青年は、ごく普通の爽やかな笑みを浮かべているだけだ。
しかし、背後からの視線が急速に冷えていくのをエマは感じた。
「エマ」
「ひっ」
リュカがいつの間にかぴたりと背後に立ち、肩に手を置く。その指が、じわりと力を込めた。
「ずいぶん楽しそうだったな」
「い、いやいや接客されてただけで――」
「……そうか。なら、いい」
口調は穏やかなのに、店員に向ける視線だけが凍るように冷たい。
青年は理由もわからず青ざめる。
「エマに勧めてよい物は、俺が選んだ物だけだ」
「えっ!?」




