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悪役令嬢ですが、前世は警察官でした。〜婚約破棄されたので科学捜査で冤罪を減らします〜  作者: オベリスク


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第9話 浮かび上がった名――“影”の気配

 父を犯罪者と決定付けた“帳簿”の鑑定から数日が過ぎ、王宮からの召喚命令により、私は再び殿下の待つ執務室に参上した。


近衛兵の案内により、執務室に入ると部屋の中央に置かれた魔導板が淡く光り、照合結果の文字が浮かび上がる。


 わたしは息をするのを忘れた。


「……っ」


 膝の裏が一瞬で冷え、握っていた召喚令状が震えた。


 そこに表示されていた名は――


『ニコル・ハーヴェイ

 財務局付・王城書記官』


 殿下が険しい顔で読み上げる。


「……ニコル。聞き覚えがあるような名だな」


「はい、殿下。

 ニコルは……父の執務室に頻繁に出入りしていた書記官です」


 殿下の表情が変わった。


 ただ驚いたのではない。

 “繋がった”と感じたときの目だ。


「財務局と王城を繋ぐ書類の“橋渡し役”。

 すなわち、帳簿や文書の流れをすべて把握している立場……」


「はい。

 ……書類の改ざんや、提出経路の操作も可能な役職です」


「“証拠の帳簿”が、いかにも都合よく見つかった理由が分かったな」


 殿下は奥歯を噛みしめた。


「アリシア、お前の言った通りだ。

 “あまりにも整いすぎた証拠”は、誰かが作ったものだ」


(やっぱり……父は……)


 胸の奥が熱く、そして痛い。


 だが同時に、背中に冷たい悪寒が走る。


(ニコルは……“駒”だ)


 父を陥れるために、もっと大きな力が動いている。

 この文官一人に、そんな計画も野望もない。


 殿下も同じ結論に辿り着いたのか、低く呟いた。


「黒幕に繋がるには……もっとも“都合のいい位置”にいる男だ」


「殿下。

 ニコル単独では不可能です。

 背後に誰かがいます」


「ああ。間違いない」


 殿下の瞳が鋭く細まる。


「だが……“誰が糸を引いているか”は、まだ見えない」


 その瞬間――


 扉が勢いよく開き、ヴォルフ副団長が駆け込んできた。


「殿下! ニコル・ハーヴェイの姿がありません!!」


「……何?」


 殿下の声が低く響く。


「ただちに執務室、宿舎、王城の全区画を探しましたが……

 彼は、本日朝の勤務を最後に姿を消しております!」


 逃げた。

 わたしは直感した。


(捜査が始まったと知った……?

 それとも“逃げろ”という指示が……?)


 殿下は怒りを押し殺しながら、冷静に命じる。


「王城内外、全ての出入り口を封鎖しろ!

 ニコルの捜索を最優先とする!」


「はっ!!」


 副団長が走り去り、室内には緊張が残った。


 殿下はわたしを見た。


「アリシア……。

 “影”は、わたしたちを本気で排除しに動いた」


「……はい」


 父の冤罪を晴らそうと手を伸ばした途端、

 その指先を切り落とすように犯人が消える――。


 このタイミングは偶然ではない。


 殿下は机に手を置き、深く息を吐いた。


「ヴィクトルではない……

 だが、ヴィクトルの“周囲の誰か”が動いている可能性が高い」


(勇者……ヴィクトルの母……

 前王妃派の動き……

 公爵家を排除したがる理由……)


 全てが一本の線に収束していくのを感じた。


 わたしは拳を握りしめる。


「殿下。

 父を救うためには……

 ニコルの確保と、背後にいる“黒幕”の特定が必須です」


「分かっている。

 だが焦れば、奴らの思うつぼだ」


 殿下はわたしに向き直る。


「アリシア。

 きみの力が必要だ。

 これからの捜査は“危険”だ。

 それでも、共に行く覚悟はあるか?」


 その問いには、迷いは必要なかった。


「もちろんです。

 殿下。わたしは……真実の味方でありたいのです」


 殿下が静かに頷く。


 その瞬間、王城の鐘が重く鳴り響いた。


 ――“行方不明者発生”の緊急招集を告げる音。


 ニコルを捕らえない限り、

 父の冤罪も、黒幕の正体も、

 そして勇者を取り巻く疑惑も――


 すべて、闇の中だ。


(負けない……絶対に)


 わたしは殿下と共に駆け出した。


 ――父を救うために。

 ――この国の捜査を変えるために。

 そして……暗がりに潜む黒幕を暴くために。


 こうして、王城は“逃亡者”を追う緊急捜査へと突入した。


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