表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢ですが、前世は警察官でした。〜婚約破棄されたので科学捜査で冤罪を減らします〜  作者: オベリスク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/10

第7話 真実への第一歩ーー王太子と共に向かう現場

 講義から一夜明けた朝。

 王城の空は快晴だったが、胸の中には重い雲がかかっていた。


 ヴァレンティン公爵――わたしの父は、昨夜のうちに“反逆容疑”で拘束された。

 その知らせが王都へ流れるより早く、王太子レオンハルト殿下から呼び出しの使いが来た。


「アリシア、準備はできているな?」


「はい、殿下」


 殿下の声には迷いがなかった。

 昨日の講義のあと、殿下の中で何かが変わったのが伝わってくる。


「これより、公爵殿が囚われている詰所へ向かう。

 ……“現場を見たい”と言ったな、アリシア」


「はい。

 わたくしの目で、事実を確かめたいのです」


 殿下はしばらくわたしを見つめ、その瞳に静かな決意を宿した。


「ならば好きにやれ。

 きみの技術を信じよう」


 胸が熱くなる。

 婚約破棄のあの日より、はるかに強い信頼の光。


(……殿下。ありがとうございます)


◇ ◇ ◇


◆王城地下・拘束詰所


 石造りの階段を下りると、ひんやりとした空気が肌にまとわりつく。

 そこに鎖の音が微かに響くたび、心臓が痛んだ。


 ――父は、本当にここに。


「殿下、こちらです」


 案内したのは近衛騎士副団長ヴォルフ。

 昨日、捜索に入っていた張本人である。


「ヴォルフ副団長。

 執務室の捜索記録を確認させていただけますか?」


 わたしが言うと、ヴォルフはぎょっとする。


「……記録……ですか?」


「はい。

 “どこを、誰が、どの順序で、どれだけ触れたか”。

 非常に重要な情報なので」


 副団長は口を開けて固まった。


(……講義、全然浸透してないじゃん……)


 殿下は軽くため息をつき、静かに言った。


「アリシアの言う通りだ。

 今後は捜索のたびに記録を残すよう、騎士団全体へ通達する」


「は、はっ……!」


 殿下の指示は速く、正確だった。

 そして――この国の捜査が、今まさに変わり始めているのを感じた。


「アリシア。

 公爵に会う前に、一つだけ聞きたい」


「はい?」


「……公爵は本当に、何も知らないのか?」


 胸が締めつけられるような痛み。


「殿下。

 “この国を守るためならば身を投げ出す方”。

 それが、わたくしの父です」


 殿下は目を閉じ、深くうなずいた。


「分かった。行こう」


◇ ◇ ◇


◆父との再会


 鉄格子の向こうに、父は座っていた。


 両手足は拘束されていない。

 ただ、魔力封じの腕輪がはめられている。


 だがそれ以上に――父の目が、異様だった。


「……アリシア……?」


 声は静かだが、どこか焦点が合っていない。

 まるで“無理に平静を装っている”ような。


「お父様!」


 駆け寄ろうとした瞬間、


「待て、アリシア」


 殿下が腕を伸ばし、わたしの肩を押さえた。

 そのまま殿下は父の前に立つ。


「ヴァレンティン公爵。

 王太子レオンハルトである。

 まずは容疑について説明を受ける必要がある」


 父は……ゆっくりと立ち上がり、殿下に頭を下げた。


「殿下。

 ……この身に覚えのない罪でございます」


 その一言を聞いただけで、確信した。


(お父様は……やはり無実だ)


 だが次の瞬間、父はわたしの方を見て、何か言おうとして――

 躊躇した。


 そして、震える声で呟く。


「アリシア……すまない。

 わたしのせいで……」


「違います! お父様は……!」


 否定しようとした瞬間、殿下が小さく手を上げて制した。


(殿下……?)


 殿下は父の目をじっと見つめ、低く言った。


「公爵。

 ……“口を塞がれている”な?」


 父の顔が一瞬だけ動いた。


 恐怖。

 警戒。

 そして――“何かを言えば誰かが死ぬ”とでも言いたげな沈黙。


(……脅されている? 誰に? 何を?)


 その緊張を破るように、殿下は静かに宣言した。


「アリシア。

 公爵の無実は“証言”ではなく、“証拠”で証明しよう。」


「殿下……!」


「きみの技術が必要だ。

 ここから先は、きみが主導して捜査を進める。」


 胸が震えた。

 聖堂の鐘のように、澄んだ音が胸の奥で響く。


(殿下……本当に、信じてくださるのですね)


◇ ◇ ◇


◆最初の手がかり


 殿下はヴォルフ副団長を振り返る。


「執務室で見つかった“証拠の帳簿”を、アリシアに見せろ。

 魔導紙と指紋粉もすぐに用意しろ」


「はっ!」


「アリシア」


「はい、殿下」


「“あれ”をしてみせろ」


 殿下の目は真剣だった。


 昨日の講義で皆の価値観を変えた“御印みしるし”の力。


 捏造された証拠も、

 仕組まれた冤罪も、

 ――指紋は決して嘘をつかない。


「承知しました。

 ――この世界に、真実を刻みましょう」


 わたしは魔導紙を広げ、粉を手に取る。


 父を救うための、“最初の証拠捜査”が始まる。


◇ ◇ ◇


◆最後の一文


 鉄格子の向こうで父が呟いた。


「アリシア……気をつけなさい……

 この国には……“見えぬ影”が……」


 殿下もわたしも、息を呑んだ。


 ――“影”。


 それはまるで、誰かが背後で糸を引く“黒幕”がいると言っているようだった。


 勇者(第2王子)の急な帰還。

 その母である前王妃派の不自然な動き。

 公爵家を狙い撃ちにした冤罪。


 すべてがひとつの線で繋がり始めていた。


(必ず暴きます……お父様)


 わたしは拳を握りしめた。


 ――この国に巣食う闇を。

 ――真実をねじ曲げる“影”を。


読んでいただきありがとうございます!

物語も佳境に入ってきましたが、楽しんでいただければ嬉しいです。

次回も無理のないペースで更新しますので、のんびりお付き合いいただけると幸いです。

ブクマや感想も励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ