表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢ですが、前世は警察官でした。〜婚約破棄されたので科学捜査で冤罪を減らします〜  作者: オベリスク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/10

第6話 王太子レオンハルト視点ーー失われていた“あの少女”

いつも読んでくださりありがとうございます!

このお話、ついに 王太子レオン視点の回 に入ります。

アリシアの変化を側から見たレオンが

これからどう動くのか――

物語の転換点になる大事なパートです。

「レオンの心情が知りたい!」

という読者様の声をいただけるような気持ちで書きました。

楽しんでいただけたら嬉しいです!

――昨日の講義のことが、まだ頭から離れない。


 アリシア・ヴァレンティン。


 婚約破棄を言い渡した“元婚約者”。

 王妃には到底ふさわしくない、と確信していたはずの少女。


 その彼女が――

 王城の講義室で、堂々と指紋の理論を語っていた。


(あれが……本当に、アリシアなのか……?)


 まるで別人だった。

 いや、“別人”というより――


(本来の姿を取り戻した、というべきか……)


◇ ◇ ◇


 アリシアとの初めての出会いは、幼い頃。


 王城の庭園で転んで膝を擦りむき、悔しさを誤魔化そうとしていた俺に、そっと声をかけてきた少女。


『殿下……泣いておられますか?』


『泣いてなどいない』


『恥ずかしいのは、痛みに気づかぬふりをすることですわ』


 その言葉に、胸を撃ち抜かれた。


 まだ幼かったのに、彼女は気高く、どこまでも澄んでいた。


 さらに驚いたことに――


 彼女はドレスの裾を少し破り、それを丁寧に俺の膝に巻いてくれた。


『殿下が、少しでも痛みから解放されますように』


 あのときの手は小さく震えていたが、

 それでも必死に俺を支えようとしていた。


(……俺はあの時から……彼女に惹かれていたんだろうな)


 次に会った時も、彼女は真剣だった。


『殿下の隣に立って恥じない人になりたいのです』


 努力家で、真っ直ぐで、気高い少女。


 それが俺の知るアリシアだった。


 だが――いつからか、アリシアは変わってしまった。


 気まぐれで侍女を泣かせ、

 学友を見下し、

 エレナ嬢に対しては露骨に敵意を向けるようになった。


 “悪役令嬢”と呼ばれ始めた頃、俺は彼女から目を背けた。


(あの時の俺は……彼女に向き合うことから逃げていた)


◇ ◇ ◇



 だが昨日。


 指紋という未知の概念を、あれほど論理的に、堂々と説明する彼女の姿を見た瞬間――俺は震えた。


(……帰ってきたのか……?)


 幼き日の、あの誇り高いアリシアが。


 誰よりも真っ直ぐで、

 誰よりも誠実で、

 誰よりも努力家で、


 そして――


(誰かの痛みを、決して見捨てない子だった)


 講義を受ける騎士たちが感動で涙ぐみ、

 魔導士たちが震え、

 文官たちが誰一人疑わないほどの説得力。


 水晶に残っていた“幼年期の俺の指紋”と、

 現在の俺の指紋が十二ヵ所以上一致したとき――


「殿下の御印は、生まれた時から変わっておりません」


 その言葉に、息が詰まった。


 彼女は王家に嘘が通じないことを承知の上で、真正面から挑んできた。


(ああ……あれが、アリシアだ)


 講義が終わった後、部屋を去る彼女の背を見ながら、

 胸が痛くなるほど強く脈打っていた。


◇ ◇ ◇



「殿下……本日の予定についてですが」


 侍従の声で、意識が現在へ引き戻される。


 机の上には、今朝届けられた文書が積まれていた。


 ――ヴァレンティン公爵、反逆容疑で拘束。


 アリシアの父。

 王国屈指の名門で、政治にも軍にも好影響をもたらしてきた名士。


(公爵殿が反逆……? ありえん)


 俺は彼と何度も議論を交わしたが、

 彼ほど王国を愛する人物はいない。


 だが示された“証拠”は妙に整いすぎていた。


(……まるで、誰かが意図的に並べたような……)


 しかも、提出者の名が曖昧だ。


 さらに不自然なのは――


「勇者殿下(第2王子殿下)が、急ぎ帰還されるとか」


(……ヴィクトルが……?)


 第2王子、ヴィクトル。

 母は前王妃で、現王妃とは別腹。


 彼は“魔王討伐の勇者”として国全体で称えられている。


 その最大の功績が、


(“王家の血筋として再び王妃の座に母を戻すべきだ”という動きに直結している)


 これは政治的に非常に危険だ。


 公爵逮捕、勇者帰還、王妃の座に絡む派閥の動き。

 全てが――繋がって見える。


(アリシアの父公爵は、現王妃派の中心……

 つまり、ヴィクトルの母の復権を望む派閥からしたら、邪魔な存在なのでは?)


 そう思った瞬間、背筋が冷えた。


(まさか……複数の動きが、すべて一本の線で繋がっている……?)


 だが推測にすぎない。


 だからこそ――


(アリシアが必要だ)


 昨日の講義は、単なる知識ではなかった。


 “嘘を暴く力”。

 “冤罪を正す力”。

 “真実へ至る術”。


 そんなものを、アリシアは持っていた。


 ……誰よりも。


 そして、彼女は言った。


『父の冤罪を晴らしたいのです』


 その瞳は、幼い頃のあの真っ直ぐさを取り戻していた。


(俺は――また、彼女を信じるべきなのか)


◇ ◇ ◇



「殿下、アリシア様がお見えです」


 侍従長の声に、胸が強く跳ねた。


(……来たか)


 扉の向こうに立つアリシアは、

 婚約破棄の夜の彼女ではなかった。


 幼い頃の記憶と、昨日の講義の“科学捜査官アリシア”が

 一つになったような――強い眼差しをしていた。


「殿下。……お時間をいただき、ありがとうございます」


 深く礼をする彼女。

 その姿になぜか胸が痛む。


「頭を上げてくれ、アリシア」


 俺はゆっくり言った。


「話を聞こう。……すべてだ」


 かつて逃げた俺ではない。

 もう彼女から目を背けない。


 父公爵の冤罪の背後にうごめくもの。

 勇者ヴィクトルとその母の影。

 そしてアリシアの変貌の真実。


(この国を救うには、……彼女が必要だ)


 だからこそ、はっきり言った。


「アリシア。

 ――おまえの“力”を貸してくれ」


 その言葉に、アリシアの青い瞳が揺れた。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!

レオン視点を書くの……めちゃくちゃ楽しかったです。

「アリシア、こんなに変わったのか……!?」

という、戸惑いと驚きと惹かれ始めの混ざった空気を

少しでも感じていただけたら嬉しいです。

気に入っていただけたら 感想・評価・ブックマーク で応援してもらえると

とっても励みになります!

次話はいよいよ物語が大きく動く回になりますので、

ぜひ続きも読んでくださいね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ