表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/17

17. 魔界都市の闇討ち


ハクアが竜化し、俺は険しい表情のままその背に乗っていた。

(もうそろそろ着きます)

竜の速度は馬車など比べ物にならない。馬車で一日かかる距離を、ものの三十分で駆け抜ける。


視界に映るのは、炎に包まれた故郷――レミオン。

大きな火柱がいくつも上がり、街は崩壊寸前だった。

中央では魔術が飛び交い、街の中をオークや黒い狼、見たこともない魔物が徘徊している。


(……ひどい有様じゃの)

「入り口で下ろせ、ハクア」

(了解です、旦那様)


街の入り口に降り立つと、ハクアは竜人化を解き、再びメイド姿に。サティスも実体を現す。


「旦那様!」

「奏!」


名前を呼ばれた瞬間、俺は走り出していた。

――向かうのは、自分の家。両親の無事を確かめるためだ。


道中、街の人々が無惨な姿で倒れていた。魔物に喰い散らかされ、原形すら留めていない者もいる。幸い、この周辺には魔物の姿はなかったが、喉の奥から嗚咽がこみ上げる。

前世でも、こんな地獄絵図は見たことがなかった。


吐き気をこらえ、一歩一歩、家へ向かう。


――だが、俺の家は大破していた。

目の前には三匹の巨大な狼型魔物。

そして奥では、父・テイラーを抱きかかえ、必死に名前を呼ぶ母・シルヴィアの姿があった。


「……父さん! 母さん!」


駆け寄ろうとするも、狼たちが立ちはだかる。

「俺の前から失せろ! ――ディストォッ!!」

炎の球を連続で放ち、三匹まとめて焼き払う。


魔物を倒すと、すぐに母へ駆け寄った。

「母さん! 父さんに何があったんだ!?」


涙を浮かべながら、シルヴィアは答える。

「……魔都市の人間の攻撃から、私を守ってくれたの」


胸の奥で怒りが爆ぜる。


その瞬間――闇の槍が俺の目の前に突き刺さった。

いや、それは……母の心臓を貫いていた。


「……は? ……ぁ、あ……」


シルヴィアの口から血が零れる。

視線を上げると、仮面を被り、赤のタキシードに黒のスーツを纏った高身長の男が降り立っていた。


「あ〜ら、一番大事なお姫様が残ってたとはねぇ。危うく殺し忘れるところだったよ」


頭が真っ白になり、俺はためらいもなくディストを放った。

だが、透明な魔力障壁に阻まれる。


「挨拶もなしに攻撃とは……ずいぶん偉いご身分だねぇ」


「お前は……死ねぇ!!」


握り拳を固め、突撃する。

しかし、男は空間ごと押し返すようにして、俺を吹き飛ばした。


瓦礫に叩きつけられ、全身に激痛が走る。

骨が何本も砕けたのがわかった。


「口も悪いし弱いし……本当に元勇者と元お姫様の子かなぁ〜?」


反撃しようにも体は動かない。

「……っと、こんな所で油を売ってる場合じゃないや。あの女の始末に加勢しないとねぇ」

そう言い残し、男は姿を消した。


――そのとき。

血を流しながら、シルヴィアがよろめきながら立ち上がり、俺のもとへ歩み寄ってきた。


そして、俺を抱きしめる。

「……カナデちゃん……あなたは、絶対助けるから」


緑色の魔法陣が展開される。

「……王女の血よ、この子をお救いください……《フルリカバリー》」


瞬く間に傷が塞がっていく。

さっきまでの激痛が嘘のように消え、傷一つない状態に戻った。


「母さん!!」

倒れ込む母を抱きかかえる。


「……カナデちゃん……治って、よかったわ」


「母さん……!」


震える声で名を呼ぶ俺に、母は微笑む。

「たった一年で、ここまで成長して……お母さん、嬉しいわ。あなたは、絶対強くなる。元王女の私が、保証する」


かすかな力で、俺の頭を撫でる。


「……大人になるまで、一緒にいたかった……な……。レイちゃんの言うこと、ちゃんと聞くのよ。……私たちの子に……生まれてきてくれて……ありがとうね……」


「母さん!! 母さん!!」


何度も、何度も名を呼ぶ。



だがシルヴィアは――安らかな表情のまま、静かに息を引き取っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ