15. 美少女の癒し
地獄の鍛錬を終え、膝から崩れ落ちた俺の身体はガタガタと震えていた。
全身に痛みが走り、呼吸は荒い。目の前がぼんやりと霞む。
訓練を終えたレイは、「明日は二千発な」と告げると、にこりともせずさっさと去って行った。
その背中を見送ると、途端に静けさが辺りを包む。
「……もうダメです、動けません……」
とぼとぼと膝をつきながら、何故か実態になっているハクアの方を見上げた。彼女は凛とした佇まいで、優雅にゆっくりと近づいてくる。
「お疲れ様でございます、カナデ様。どうぞ、こちらへお座りくださいませ」
差し出された手を取ると、柔らかなぬくもりが伝わった。
「私の加護で、少しでも回復をお助けいたします。ですが……ほんの少しだけ、特別なケアをさせていただきます」
優しい声と共に指先がこめかみを撫でる。じわりと広がる温かさが痛みを和らげていく。
「ひゃっ……あっ、そこは……」
くすぐったさに思わず顔をしかめるが、指先はゆっくりと動き続ける。
「や、やめてくれ….そこは…くすぐったいって!」
「ふふっ、カナデ様の弱点を知るのは大切なことですわ」
微笑むハクアの手は止まらず、俺は逃げようにも力が入らない。8歳の身体はハクアよりも小さく力も負ける。
「おい、ハクア! 訓練でヘトヘトなのにそんなこと……!」
そこへ冷たい声が飛んだ。
「小娘、餓鬼のような真似をしよって」
横を見ると、サティスも実態となって呆れ顔で腕を組み立っていた。
「まあ、少しは役に立っているんじゃろうが、雑じゃな」
「魔神、羨ましいのですか?」
「本気で言ってるとしたら呆れを通り越すのぉ」
サティスはそういう事に一切関心はないようだ。
ハクアは頭を軽く下げて優しい笑みを返す。
「これで血行も良くなり、回復も早まるのです。カナデ様、どうぞご安心くださいませ」
俺は小さく息を吐き、ゆっくりと目を閉じた。
「はぁ……これからも、こんな日々が続くんだろうな……」
そう呟きながら、わずかに心がほどけていくのを感じていた。
しかし、その1週間後俺は絶望することになるーー




