13. 銀髪の美少女・ハクア
目を覚ますと――視界いっぱいに長い銀髪が揺れた。艶やかな髪は光を反射し、赤い瞳がこちらを覗き込んでいる。しかもその持ち主は、ミニスカメイド姿の美少女だった。
膝枕されているらしい。頬に触れる太ももはやわらかく、ほんのり暖かい。胸は……Eカップぐらいか? いや、そんなことはどうでもいい。
「起きましたか?」
「……うわっ!」
思わず飛び起きる俺を、美少女は首をかしげながら見つめてくる。赤い瞳には「なぜ驚く?」とでも言いたげな光が宿っていた。
「お、お前は一体……誰だ?」
「誰って……先程まで戦っていたじゃないですか」
先程まで? まさかオークのことか?
(奏、此奴は先程の竜じゃぞ)
(あのゴツい竜が、こんな美少女に? ありえるか? てかなんでメイド服なんだ?)
はぁ、とため息をつくサティスの声が頭に響く。
(質問が多いの。目の前にいる本人に聞いたらどうじゃ)
メイド服の美少女は静かに立ち上がった。
「先程は完敗でした。私は人々から“白き聖龍”と呼ばれております。名はハクアと申します」
「あ、これは丁寧に……俺はカナ――いやいやいや! 本当にさっきのドラゴンか!? しかもなんでメイド服!?」
俺のツッコミに、ハクアは小首を傾げ、可愛らしく瞬きをした。
「負けた竜は、代々勝者に仕えてきました。……まあ、先祖代々負けたことはなかったんですけど。ちなみに、この“召物”は貴方様の記憶から拝借しました。人間の服はよくわからなかったので」
(なるほど、俺の記憶グッジョブ)
「いや、支えられても困るんだが……こっちに拒否権はあるのか?」
するとハクアは両手を頬に当て、「およよ」とでも言いそうな顔で、大根役者のようにわざとらしく肩を落とす。
「私は……貴方様に必要とされないのでしょうか?」
(おい、サティス。竜ってこんなキャラなのか?)
(知らぬ。妾は竜とは関わってこなかったからの)
「えーっとな……俺の師匠の家はもう定員オーバーだから、一人増えるとかなりきついんだよ」
「それであれば――」
ハクアの体がふわりと光の粒子にほどけ、次の瞬間、俺の胸元へと吸い込まれるように消えた。
(これなら大丈夫ですか?)
(……いや、物理的には楽だけど問題が――)
(おい小娘、何を勝手に入り込んできておる!)
(あら、先約さんは魔神でしたか。なるほど、この魔力……道理で)
(なぁ、二人とも大丈夫か?)
(ノーじゃ)
(はい)
(では、私が魔神さんのお世話もしますね? えっと……サティスさん、でしたよね?)
(余計なことをせず、大人しく黙っておれ)
(もちろん、必要なことしかしませんよ?)
こうして――ほんの数分前まで戦っていた竜が、なぜか俺の中に宿った。
意味がわからない。だが戦闘を終えて痛感したのは、今の魔術ではオークどころか、初級モンスターすら倒せないという、どうしようもない悔しさだった。




