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恋はエンドレス  作者: 弓 ユカミ
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落合真雪

僕は落合真雪を食い入るように見つめた。落合真雪の髪は短かった。耳まで髪がかかっていなかった。ここまで短い髪の女性を僕はついぞ見たことがなかった。さっぱりしており、清潔感のあるさらさらとした髪質に見えた。顔も見た。前髪で眉毛は見えなかった。目は他の美人のクラスメートに比べると、小さかったが、つぶらな瞳でどことなく透き通っていた。より目ではななかった。横からでもわかる可愛げのある目をしていた。鼻は忘れ鼻で印象は薄かった。唇は白かった。肌は多分学校一白かった。小柄だった。僕は朝比奈先生が教壇で何か話しているのを右から左へと聞き流し、落合真雪をまじまじと見ていた。

落合真雪は、僕の視線に気づく素振りすら見せず、朝比奈先生の話に黙って耳を傾けていた。

僕は三分ほど落合真雪を観察した後、これ以上見ると落合真雪に気付かれる恐れがあったので、観察を中断した。まぁ、三分も見れば、その容姿は十分に把握できたはずである。あとは性格だが、こればかりは話しかけるしかない。が、僕には知らない女子に話しかける勇気を持ち合わせていなかった。だから、話すことはきっとないだろう。しかし、淡い期待以上に落合真雪は魅力的な人だった。僕には切井さんがいあるから、落合真雪に恋に落ちる可能性はないと言いきりたいが、恋はいつだって不意に訪れるもの。どうなるかは現状わからない。

さて、朝比奈先生のお話が済んだところで、僕たちは始業式のため、体育館に向かった。

体育館で始業式が始まり、退屈を持て余したまま始業式が終わり、体育館から教室に戻ってきて、簡単なホームルームがあり、それが終わると、あとは放課後となった。

僕は文芸部に所属しているが、今日は活動がないようなので(昇降口の近くの廊下の壁に各部活の活動や連絡事項を記す黒板が設置されており、文芸部の欄には何も書かれていなかった)、家に直帰することにしよう、と思ったが、どうししても切井さんに話したい一心で切井さんの席に向かった。が、いきなり話しかけるのはかえって不自然だと思いなおして足を止めた。切井さんは軽く友人と談笑した後、モスグリーンのリュックを背負い、教室を出ていった。僕は後をつけてみることにした。言っておくがこれは決してストーカー行為ではない。話しかけるチャンスをうかがっているだけなのだ。僕もリュックを背負い、教室を出た。

切井さんはすたすたと廊下を歩き、階段を降り、また廊下を少し歩き、ある部屋の前へと着いた。そこは図書室だった。切井さんは図書室へ入っていった。

僕は中へ入るのをはじめ躊躇したが、ええい構うものかと結局中へすうっと吸い込まれていった。

室内は書棚がずらりと並んでいた。自習スペースもあった。

切井さんを僕は探した。切井さんはすぐに見つかった。

窓側の書棚のところに切井さんは立っていた。切井さんは本を手に取ってその本をパラパラと読んで、その本を書棚へとしまい、また違う本を手に取り、またパラパラとはぐり、あるページでふっと止め、そのページの書かれている文章を精読していた。僕は近づいていって切井さんのちょうど後ろにある革張りのソファに気付かれないように腰を下ろした。しかし、何も本を持っていなかったため、リュックのチャックを慎重にゆっくりと音をできるだけ立てないように開き、現代文の教科書を取り出して、読むふりをして、背後の音に耳を澄ませた。運が良ければ切井さんは座る椅子がないかを探し、僕をすぐに見つけ、僕に声をかけるに違いない。僕はその瞬間をじりじりしながら待ち続けた。

しばらく時間が流れたように感じた。切井さんのページをめくる音、司書さんが本の貸し出し返却の際に鳴らすピッとしたスキャン音、自習スペースでシャーペンを走らせる音、廊下での騒ぎ声、エアーコンディショナーの通風音、そして僕の高鳴る鼓動、いろりろな音がまじりあっていた。本の匂いはそこまでしなかった。室内は綺麗に掃除されており、埃っぽくもなかった。

僕は待ってても仕方ないんじゃないかと思いはじめ、ついに切井さんに話しかけることに決めた。これは一大決心である。僕はソファから立ち、リュックに教科書を放り込み、背負うと、後ろを振り返った。

切井さんは本を読んでいるときでさえまっすぐ垂直に立ち、姿勢を崩さなかった。僕は切井さんの隣に静かに立った。切井さんは集中しているのか、僕の存在には気づかない。僕はなんだか虚しくなった。が、耐えた。僕は目の前の本を一冊手に取った。するりとした小さな音が響いた。

切井さんはふと顔を上げ、僕の方を見た。



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