株式会社佐田都市開発
株式会社佐田都市開発。俺の故郷でもあるこの地域に根差したローカルデベロッパーだ。
新駅の開業に合わせ周辺の都市開発を一手に引き受けている。
二十年前。俺とウリは、小学生最後の年、この街に絶望し復讐を誓った。
新駅開発の噂が出始めていたこの街は、この頃既に田畑が次々と宅地に姿を変えていた。
野放図だったその動きに、一定の指向性と更なる勢いを与えたのが新駅開発の動きだった。
新駅の開発予定地近辺には都市開発の手が入りつつあった。
当時サッカー少年だった俺たちは、日系ブラジル人に師事していた。
師である彼の工場は近隣の住民との軋轢で閉じ、その後も衝突は解消されず、彼自身もこの地を去ることになる。
俺は、大切な場所と人を、この土地と、よくわからない思惑と企みを持った大人たちに、奪われたのだと感じた。
そして羽龍と共に、この街に蔓延る旧来の住人だの価値観だのを一掃してやろうと計画を立てた。
その計画は長じるにつけ具体的になり、この街の都市開発に乗じる方向で固まった。
羽龍は市政に入り込むために、新駅近辺の人口増加に露骨に舵を切り始めた市に、ITコンサルタントと言いつつ広報企画なども担う、情報の全てを請け負える会社を立ち上げ受注を勝ち取った。採算はかなり度外視したようだ。
俺はこの街の都市開発で高い権限を持って実働に加われるよう、まずはメジャーのデベロッパーで実績を積み、その成果と人脈を持ってこの街の都市開発を担っていた会社、佐田都市開発に希望の職種と職位で転職を果たした。
すべて計画通りだった。しかし想定通りではない事実があった。
計算通りと思っていたのに前提が違っていたのだ。