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ローカルな子どもの遊び

 俺の疑問に魚躬さんが答えた。

 治療のときにさりげなくヒアリングしたらしい。その辺のケアも流石だ。


「テンカっていう遊びらしいですよ。あまり聞いたことありませんがどんな遊びなんでしょうね?」


 その遊びの名前は、聞き覚えがあった。

 

「懐かしいな。俺もやったよ」


 俺が小学生の頃急に流行った遊びだ。

 ご存じなんですか? と尋ねる魚躬さんに、謎の球技としか言えないテンカについてあの頃を思い出しながら説明した。



 ふたりで向かい合い、十メートルほど距離を取る。

 サッカーボールやドッヂボールを両手で持ち、股下からアンダースローで相手に向けて投げる。

 相手はボールを両手でキャッチし、同じように投げる。

 基本はこれを繰り返す。ボールがキャッチできなかったら受け手のアウト。受け手のキャッチできる範囲を超える暴投は投げ手のアウト。

 この時、投げ手も受け手も足の位置は固定で、半歩でも動いたら動いたプレイヤーのアウト。

 勝利条件は勝負前に双方で決める。五点先取や十点先取でよくプレイしていた記憶がある。


 片手でキャッチ出来たら片手のオーバースローで投げられる、両手をクロスしてキャッチ出来たら三歩近づいて投げることができる、等の失点のリスクを冒して成功すれば必殺技が使えるようなルールがあった。


 世代特有、地方特有の流行のようにも思えるが、詳細は不明。

 同世代でも同じ出身地でも知らない者も多く、同じようなルールの球技は知っているが名前が異なるないしは名前がついてなかったり、名前が同じないしは似通っているのに、複数で行ったり、手のひらサイズのゴムボールでプレイする、ボールを投げるのではなく蹴る、ゲーム内容そのものや得点や勝敗のつけ方がそもそも違うなど、ルールがまったく異なったりしていて、ルーツが何なのかもわからない。

 ただ、どのルールも完成度が高く子どもを夢中にさせたという共通点がある。


 俺が知っているテンカと同じルールなら、オーバースローでボールをぶつけられれば、痣ができることもあるかもしれない。

 実際俺も痣を作ったことくらいあったはずだ。材料が乏しい中で断定すべきではなく、今は殊更気にせずに、しかし気には留めておくことにした。


 あの少年は突き指の経過を診るために一週間後に再診に来る予定だ。

 テンカを肴に多少会話でもできれば、気付く点があるかもしれない。

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