火種
「集客」の施策が殊の外「当たって」しまったがため、実を担う施策が間に合っていないという事情自体、見込みの甘さの証左にしかならないが、仮に人口の増加と集中がもう少しなだらかだったとしても、空いている土地を根こそぎ宅地にする勢いで次々に建てられる大規模レジデンスや分譲住宅の数を考えたとき、その総戸数分をカバーできるだけの託児所、保育園、幼稚園、小中学校が既存の計画ではどう見積もっても足りていない事実は、「看板に偽りあり」の誹りを受けても仕方がない。
デベロッパーは民間企業だ。市政と多少連携はとっているとは言え、都市開発は企業の論理、利益優先で行われるのは仕方のないこと。
隣の市ではメジャーデベロッパーと市がかなり緊密に連携をとっていて、商と住と行政サービスがうまく融合した施設や住居、景観や街並みも考慮した建設が行われていたが、この市ではそれはなく、とにかく人口増加、とにかく片っ端から住居の建設という古い時代のやり方が中心だった。
アキが在籍していた地場の有力デベロッパー佐田都市開発以外にも、大手から地方の会社まで、あらゆる建設会社と不動産会社が、陣取り合戦のように土地をかき集め、無理やりマンションやアパート、分譲住宅を無軌道に乱立させていた。
街並みや景観も、後出しで取ってつけたように基準なんかを打ち出していたが、隣の市のように開発段階からデベロッパーが指揮をとって街並みづくりを行うような細やかさはなく、出来上がった街並みには見た目やすみやすさなど、あらゆる面で雲泥の差があった。
うちからは新規集客と固定化の観点で、入れた住民に対するケアを充実させてロイヤルティ向上による長期定着化と住民の育成による息の長い収益構造の提案はしていたが、市としては目先の人口増加に捉われ、あまり考慮はされていない。
しかし、住民はそんな背景は知る由もない。
今上がっている声は、市への不満が中心であるが、一部の自称情報通のインフルエンサーもどきが、市と連携しているコンサルとしてうちの名前を挙げている。政策を伴わない集客の、看板部分を担ったウチが多少矢面に立たされる覚悟は必要そうだ。
それ以上に、この火種の扱い次第では、再発注の基となる市政側の計画やその成果自体が危ぶまれる状況にもなり得るだろう。
書上さんの情報は、即対応を迫られるほどのものではないが、考えうる事態へのリスクと対策の検討と、現時点だからまだ可能なクライシス対応についての市側への提言の必要性はありそうだ。
市の担当と会話する機会にそれとなく伝えてみるか。




