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かつての職場の後輩


 時計を見ると、そろそろ向かう時間になっていた。暇と言っても、毎日予定がないわけではないのだ。

 とは言っても、これも「仕事」なのだが。



「あ、高天主事! こっちです」


「あぁ、お待たせ」


 指定されたカフェに行くと、佐田都市開発で営業事務として俺の仕事を助けてくれていた八木(やぎ)さんが既に店内にいて手を振っている。


「この席狭いですよね。さっきまで混んでて......もう余裕ありそうですので移動させてもらいますね」


「俺が頼むよ。ちょっと待ってて」


 ホールにいたスタッフに声をかけ、席移動をさせてもらう。

 荷物を持って付いてきた八木さんの椅子を引いてやる。これはマランドロっぽいだろう。


「あ、ありがとうございます。高天主事ってそんな気遣いする人でしたっけ?」


「俺もう主事じゃないよ。八木さんは相変わらずはっきりものを言うよな。それじゃ、俺も何か買ってくるよ。八木さんはおかわりかなにかいる?」


「あ、コーヒーはまだあるので大丈夫です。奢ってくれるんですか? でしたらコーヒーゼリーご馳走になります!」


「了解」コーヒー飲みながらコーヒーゼリーいくのか? などと余計なことは言わない。

 俺は荷物を置いてカウンターに行った。



「それで、わからないところってゼネコンからの見積もりの項目? 大上課長には訊いた?」


 ドリンクとコーヒーゼリーを乗せたトレーをテーブルに置き、コーヒーゼリーを八木さんの方に渡しながら早速切り出した。



 先日八木さんからわからないことがあって困っていると連絡を受けた。

 電話じゃ分かりにくいしメールとデータでやり取りするのも面倒だ。どうせ時間ならあるからと、会社に行くと言った。俺は既に外部の人間ではあるが、佐田の事務所の入った自社ビルの一階には簡単な打ち合わせができるフリースペースがあり、社員を伴っていれば誰でも入ることができた。

 しかし八木さんからは、流石にそれは申し訳ないと固辞されてしまい、会社の近くのカフェで待ち合わせることになったのだ。

 距離的には会社に行くのとほぼ変わらないのだが、俺の心情的に会社には行きにくいと思っているのではと配慮してくれたのだろうか。別に行きにくくは無いのだが、気持ちはありがたかった。


「久しぶりってほどでもないですけど、少しは雑談とか近況報告とか。やっぱり高天主事は高天主事ですねぇ」


「あー、だって八木さん休憩時間使ってるんだろ? あまり時間ないんじゃ?」


「猿渡主任には高天主事に助けてもらうって言ってあります。

仕事ですから時間はいくら使っても大丈夫です。大上課長は一週間出張でいませんから、ごちゃごちゃ言われませんよ。

まあそんな状況なので課長に訊けなくて困っているんですけどね」


 佐田は地域密着ではあるが年に何件かは地方の案件を動かしている。状況次第で一週間程度の出張を課される場面は職位問わず発生していた。

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