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砦探検

「あれが噂の魔王軍参謀…?」

「本当に人間じゃん! 黒髪黒目の…」

「まあ魔王様が認めるくらいらしいし…?」

「あたまよさそう」

「意外とイイ顔してないか?」

「刺さる人には刺さりそうね…」


 彼女の後を追って砦に入ると、頭に角、背中に羽を生やした人達――魔族がひそひそと俺の方を見て話をしていた。

 ひそひそ話を頑張って耳を立てて聞いてみると、意外と悪い印象は持たれてなさそうで安心した~って感じ。

 あと俺はあんまり頭良くないから期待しないでね…。


「…見て」


 唐突にクレアが足を止めたかと思うと、窓の方を指差す。


「あそこにいるのが隣国、オルフェウル王国の騎士団と、勇者たち」


 なるほど確かに。銀の鎧を身に着けた人間が沢山だ。

 それに、よくわからん絵が描かれた旗を持っている。国旗かなあれ。


「…あっちが攻撃を仕掛けたら、こっちも反撃する。貴方も準備しておいて」


 とだけ告げ、クレアはどこかに行ってしまった。

 …やっぱり塩対応だよな。まあ、いきなり知らん男、しかも異種族が自分より高い位に就いたらなんだこいつ…ってなるよな…。



 とりあえず、こっちから手出ししてはいけないらしい。

 西の魔王の方針があんまり誰も殺したくなくて皆と仲良くしたいみたいな感じだし、その姿勢を貫くつもりなのだろう。

 と言う訳で、あっちが仕掛けてくるまで暇なので砦内を探索である。

 早速何か不思議な匂いが漂ってきたため、それに釣られていくと…そこには食堂が。

 更には何人かの料理人らしい魔族さんが!


「あ、もしかしてあの参謀さんですか?」


 その中の一人が気づいてくれたらしく、俺に声を掛けてくれる。


「あ、ああ。君たちは料理人かい?」

「見ての通りっす!」


 三人の料理人が居るが、その中で一人、金色の髪をした青年が一番料理が上手そうであった。

 逆に、他の二人はアシスタントって感じだろうか。

 フライパンで米を炒め…巨大な鍋には食材がゴロゴロ、ぐつぐつと音を立てて煮込まれている。


「ほう…君、俺と契約して魔王城で働かないか?」

「け、契約!? てか、自分は魔王城には行けないっすよ」

「あ、そうなの?」

「すいません…ここで働いてるのは家が近いからっす。ここが一番人間との戦いが多いらしくて、それで自分の村を守ってくれてる人達に少しでも恩返しがしたくてっすね…」


 おお。すごい良い子。


「分かった! 急に勧誘してごめんな」

「いえ全然! うれしかったっす!」

「それはそれとして…この鍋、何が入ってるんだ?」

「あ、これですか?」


 見たことない食材が多くてちょっと気になってしまった。


「シーサーペントの肉に、新鮮な野菜たちっす。うちの村で取れたんすよ!」

「へー」


 シーサーペントってあの海に居るとされてる奴だよな…?

 魚鍋は一度も食べたことがないんだが、旨いのだろうか…。





 食事が出来るのはまだ当分先とのことで、調理場を後にする。

 あの鍋だいぶ煮込まれてたみたいだけど、まだ煮込むのか…。

 なんて考えながら歩いていると、再び窓から勇者アルスとその仲間っぽい奴らと、更に鎧を着こんだ騎士たちが何やらあっちへこっちへ移動していた。


「なあ、あいつらっていつからいるんだ?」


 丁度近くに槍を持った兵士っぽい魔族さんが居たので聞いてみる。


「お勤めご苦労様です参謀殿!」

「は、はい…」

「あいつら人間は前日の昼頃よりあそこであのように不思議な行動を繰り返しています!」


 前日の昼からってなかなかだな。


「では私はこれにて!」


 そう言うと、魔族さんはキビキビと歩いて何処かに行ってしまった。

 真面目そうな人だったな…。




 更に砦の中を歩いてみると、今度は大きな図書館に出た。

 こう見えても読書は好きな方だ。ライトノベルに限らず、割となんでも読むタイプの人間である。

 適当に棚の中から本を手に取り、読んでみる。


「飛行魔法について」


 なにこれ…ああ。ここ異世界だった。


「…飛行魔法について!?」


 俺空飛びたいぞ!






「えーっと、まず基本は初級編で押さえていると思うので、実際に空中で動いてみましょう…?」


 やばい。初級編見てねえから分からん。

 まあやるだけやってみよ。


「魔力で体を支え、運びます。自分の背中に羽が生えているのをイメージするか、巨大な手が上から自分を掴んで動かしているイメージを持ってください…?」


 試しに自分に羽が生えているのをイメージしてみて、それが羽ばたく姿を想像してみると…うわ浮いた。


「すげええええええええええ!」


 柄にもなく叫んでしまったが、明らかに俺の足は地面を踏んでいない。

 興奮が止まらない。

 そのまま本に書いてあったように、羽を生やしながら低空で素早く飛ぶ自分の姿を想像してみると、これまたうまくいった。


「えーっと、慣れてきたら、羽が生えていたり手が自分を掴んでいるイメージではなく、自分が飛行魔法を使って普通に飛んでいる姿のイメージに変えてください…」


 はいはいなるほど。

 普通に自分が浮遊してる姿を思い浮かべればいいのね。

 自分がスーッと地上スレスレを拘束で移動する姿を思い浮かべると…これまた成功。

 楽しいなコレ。





「てか、初級編見てないからなんかヤバいことしでかしてそうだな…」


 例えば飛行魔術は三十秒以上使うと体が爆発しますとか。

 基礎は何事においても肝心なので、初級の飛行魔法の本を探そうとするが…何やら外が騒がしい。






「オルフェウル王国に警告する。その魔術防壁を超えた場合、即刻攻撃を行う。速やかに剣を収め、帰還せよ」


 クレアは声を魔法で拡散させ、勇者達に警告を行う。

 しかし、勇者達はその警告を無視し、泡壁の核が作り出す壁を破壊、そこから何人もの騎士が砦目掛けて走ってくる。


「っ…アイスランス」


 彼女は即座に数十もの魔法を展開。

 騎士達の進行経路に向かって槍を放とうとする…が。


「…!」


 彼女は砦から恐ろしい速度で飛んでいく何者かの姿を目視し、その攻撃を取りやめた。

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