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ハイスピード転生

「それで、君には固有魔法の毒魔法(ポイズンマジック)を授けるから、それで頑張ってね」

「?????」


 いきなりトラックにバチ轢かれて、明日が最終回だったアニメの結末が見たかったな~なんて後悔をしたかと思ったら、いつの間にか良く分からない白い部屋に。

 そして目の前にはイケメンな男の人。白い羽衣に大きい羽、そして告げられた「君は僕たちの不手際で死んでしまったんだ、ごめんね?」という発言。

 ああ、これは俗に言う異世界転生だろうか。

 と思ったのも束の間。


「んじゃ、良い異世界ライフを~」


 と乱雑に体を蹴り飛ばされた。


「え、ちょっと?????」


 未だに状況を完全に理解したとは言い難く、頭の周りにはてなマークが飛び交っている俺に対してなんたる非情な仕打ち。

 伝えられたのは俺が死んだこと、毒魔法(ポイズンマジック)を授けられたこと、異世界ライフを~。だけである。

 まともな説明もなく、超スピードで異世界に放り込まれてしまった。

 なんたる対応だ。俺が彼の上司ならクビにしてやるぞ、と内心憤った。

 ここまでが昨日の前半の記憶。死んでから蹴り飛ばされるまで、体感にしておおよそ三十秒であった。

 何事もテンポが大事であるが、これは早すぎるだろう…。


 そして大した説明もないままに、地球では見たこともないような大森林に放り込まれていた。

 その後、毒魔法(ポイズンマジック)と言うのが気になったので、それの研究をしていたら変なモンスターに襲われたと言うのが昨日の後半の記憶。

 意外にも、毒を操ることが出来るらしい毒魔法(ポイズンマジック)は頭の悪い俺でも感覚で使える感じのお手軽能力で助かった。


 

 そして本日。

 絶賛戦闘中である。

 相対するはすっごい勇ましそうな服装をして、すごいかっこいい剣を持った青年。俺と同じ年くらいかな? 見た目に関する情報の語彙力が低いのは申し訳ないのだが、他にどう形容していいか分からないのだ。


 彼の一閃一閃は非常に鋭く、避けるだけで精一杯である。てか俺こんなに動けたっけ…。

 毒魔法(ポイズンマジック)で毒液を放射しても、紙一重で躱されて当たらない。

 仕方がないので、さっきまで実験していた『相手の動きを鈍くする神経毒』を体中から噴霧。

 俺の毒魔法(ポイズンマジック)は、ぼくのかんがえたさいきょうのどく、を実現させるトンデモな魔法であった。液体気体個体のどれかで体の好きな部分から射出が出来る。

 

 俺の出した毒はうまいコト作用したらしく、青年の動きが少し鈍る。

 そこになんちゃって回し蹴りを炸裂させると、青年の体が見事に森の奥へ吹っ飛んでいき、姿が見えなくなった。


「大丈夫?」


 それを見届け、俺は一人の少女の方へ駆け寄る。

 そこにはピンク色の髪の毛をした少女がぺたりと座り込んでいた。


「あ、貴方は…?」


 少女はコチラを揺れる瞳で捉えていた。






 なんで俺が戦闘なんかしていたのかと言うと、それは唐突に訪れたからだ。…説明になってないな。

 異世界に蹴り飛ばされ、魔法の実験をしながら、人里を探し求めて右往左往していた。それはもう夜ですら。

 この森にはモンスターが多く、やばそうな熊や強そうなアリやドラゴンみたいな蛇が定期的に俺のことを狙ってきたので、全員『死に至らないくらいの神経毒』をぶっかけて黙らせた。

 なんて環境テロみたいなことをしていると、遠くの方から怒声と駆けるような足音が聞こえてきた。


「――待て、魔王ッ!」

「ハァ…ハァ…」


 木々の隙間から見えるのは、ピンク色の髪の毛をした少女を俺くらいの青年が剣を掲げながら襲うと言う完全にアウトな絵面。

 これはまずいぞと彼と少女の間に立つ。


「すまない、誰かは知らないがそこをどいてくれないかっ!」

「何言ってるんだ! 出来るわけないだろう!」


 モラル的にダメでしょ。このロリコンが!


「何!? 君、人間だと言うのに魔族に与すると言うのか…!?」


 魔族!? なんて妄想癖だ。クスリでもキメてるのか…!? って、そういえばここ異世界だった。俺の方がクスリキメてるかもしれん。

 何はともあれ、幼き子を襲うのはモラル的にダメでしょう!


「ならばすまないが、ここは斬り捨ててでも先に行かせてもらう!」


 金髪の彼が剣を構え、そのまま俺に切りかかってくる…と言った感じで戦闘になってしまった。






 なんて回想をしていると、森の奥から先程の青年が歩いてくる。


「…まさか西の魔王の陣営に、君のようなこんなにも強力な者が居たとは…想定外だったよ」


 なんて言いながら、抜き身の刀身をこちらに向けてくる。

 俺って魔王の陣営なの?


「君の立場が違えば、僕たちは最高の仲間になっていたかもしれないのにね…」


 IFの話はちょっとよくわかんない…。


「ここは僕の奥義を使ってでも君を倒すとするよ!」


 と言いながら、彼は剣を上段に構え、その剣に煌びやかな光が集まっていく。

 なんかヤバそうだ。


毒魔法(ポイズンマジック)!」


 手から死なない程度の神経毒液を勢いよく噴射。

 しかしながら、それは謎の力で彼に届かない。


「無駄さ! 僕がこの技を完成させるまで、僕の周りにはいかなる攻撃も通さないバリアが貼ってある!」


 え~。もしかしてあの人、如何にも剣ビーム出します! みたいな必殺技完成するまで無敵?

 俺、自分の身を守るタイプの手段持ってないからだいぶ不味いんだよな。


「よし、逃げよう」

「え、あっ」


 少女の手を取って、その場から離脱…しようとした瞬間。


「もう遅い!」


 と、ありえないくらい高く、まるで天まで伸びたその光が振り下ろされる。

 と、そういえば、技を完成させるまでバリアが貼ってあるとか言ってたけど。


「えい」


 うまくいったらいいな~程度でその場から離脱しつつまた神経毒をぶっぱなすと…。


「うわあああああああああ!」


 と、絶叫。そして天まで届くかのような光はいつの間にか消えていた。




「くぅううう…」


 青年の元まで戻ってみると、青年は顔を苦痛の表情に歪めながら痛みに堪えていた。

 流石に痛いのはかわいそうなので『多少痛みが引く解毒』をぶっかける。体がまともに動かないのは以前として変わらない筈なのでまあいいだろう。


「おい、誰かは知らないけど、あんまり小さい子を虐めるんじゃないぞ」


 と、痛みが引いて呆けたような顔をしている青年は俺の言葉を聞いて、そのまぬけな顔を真面目な物に変えると、


「君は知らないのか!? そこのそいつは小さい少女なんかではない! れっきとした魔王の一人、人類を恐怖で脅かす存在なんだぞ!」


 と絶叫。


「そ、そうなの?」


 さっきから魔族がどうとか言っていたし、やけに迫真だからちょっと事情が気になってしまう。

 少女の事をもう一度見てみると、なるほど確かに、普通の人間とは違って角が生えて小さい羽も生えているではないか。


「それに、僕の事も知らないのかい? 僕は勇者アルスだぞ!」

「そうなの?」


 まあ確かに…やけにイケメンだな~って思ってたんだけど。勇者なんだ。あの正義の味方の。


「あれ、俺って不味いことしてる?」

「自覚がなかったのか!」


 あら~みたいな顔をしてくる勇者アルス。


「ま、待って…」


 と、その少女が俺の後ろから喋りかけてくる。


「私、まだ誰も殺してないし、悪い魔王じゃない…」

「はあ!? 魔王に良いも悪いもないだろう! 冗談はよしてくれ!」

「ちょ、ちょっとそんな言い方…」


 喧嘩でもおっぱじめる気なのかってくらい怒気が籠ってたので勇者を宥めようとする。

 と、上空から凄い嫌な予感。


 その場から素早く飛びのくと、そこには全身真っ黒な鎧の騎士。


「魔王様。お怪我はありませんか?」


 と、騎士は少女に声を掛ける。

 それと同時に、周りから更に嫌な予感。


「オイオイオイ、勇者にそいつは…勇者の仲間か。勇者に似てなんとも貧弱そうな見た目だなァ」


 木々の間から見える、青色の体毛、二メートルはあろうかという巨体。

 二足歩行で歩く巨大な虎が居た。


「なんじゃなんじゃ!? 姫様がピンチだと聞いたのじゃが、勇者は既に倒れてしもうてるではないか! 姫様よ、強くなったのう」

「……」


 上空からは十メートルはあろうかという巨大なドラゴン、そして浮遊する銀色の髪をした魔法使いのような少女が居た。凄い頑張ってよく見たら角が生えている。


「まずは勇者を始末して…」


 騎士が剣を振るった直後、勇者アルスの首が切断され、彼の体が光の粒子となって消えた。


「お、おいお前! 今勇者の事…」

「次はお前だ」


 流石に前科があったとしても殺すのはないだろう。


「勇者の仲間とは言え、どうやら加護は持ってないらしいなァ! 気の毒だが死んでもらうぜ!」

「いや、俺別に勇者とはさっき会ったばっかりなんだけど…」


 俺勇者の仲間判定されてるのか…。


「姫様! すぐ助けるからのおー!」


 上空からドラゴンがそう叫ぶ。

 すっごい煩い。


「……アイスランス」


 上の魔法使いがそう呟くと、彼女の周りに数本の氷で出来た槍が浮遊。俺の方へ飛来してくる。

 それを危なげなく回避。

 と、


「覚悟!」


 と、黒い騎士が俺に向かって切りかかってくる。

 それも危なげなく回避。勇者の剣筋より遅いから以外と楽だな。


「ちょっと、落ち着いて…俺は別に勇者の仲間じゃ…」

「問答無用!」


 あー…なんか少女の仲間っぽいけど、勘違いしてるみたいだし、少しダウンさせて話を聞いてもらうことにしよう。

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