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幸せな夜

 買ったばかりのパジャマを纏って、俺と一緒に寝ていいか尋ねてきた、黒髪の美少女、ユア。

 その表情は、決して笑顔と言うわけではなく、


「仕方ないから、一緒に寝てあげる」


 とでも言いたげな微妙なものだった。

 ただ、赤くなっているので、照れているのか、あるいは恥ずかしがってはいるようなのだが、その真意が掴めず、俺の方がドギマギしてしまう。


「一緒にって、俺とか?」


「うん……」


「なんでそんなふうに……」


「……パパ活って、そういうものじゃないの?」


 そう言われると、そういうもののような気はするが……。


「まあ、一般的にはそうかもしれないが、俺はさっきアイナに言ったとおり、君たちに手を出すつもりはないんだがな……」


「……それは、今後もずっと?」


「……まあ、お互いに恋愛感情を持って、恋人同士にでもなれば話は別だけどな……」


「うん……たぶん、そんな感じだろうとは思った。おじさん……ううん、パパはそういうの、不器用そうだから……だったら、隣で添い寝するだけでもいいよ」


 相変わらず、一緒に寝てあげてもいいよ、というような、聞きようによっては上から目線っぽい発言なのだが……どういうわけか、お願いされているように感じた。


「……なるほど、単なる添い寝か……まあ、親子だと思えばアリかもしれないな」


 俺もつい、そんなふうに言ってしまった……それぐらい、ユアのことが可愛く思えた。

 なんだろう……彼女は、俺に心を開いているというわけじゃないと思っていたんだが。


 しかし奇妙なことに、彼女が俺のことを慕ってくれているような気がした。

 まるで、女子高生ぐらいの娘が、久しぶりに父親に甘えたがっているような感覚を覚えたのだ……まあ、前世でも、この世界に来てからも、俺に血を分けた娘なんかいないんだけど。


「そう? やっぱりそう思う? そうよね……逆に、少しぐらいそういうのがないと、一体何が目的なんだろうって不安に思えるから……」


 ……なるほど、彼女にとっては、何にも下心がないのにアパートにタダで泊めてやる、というのが、逆に不安に思えたのかもしれない。


「けど、アイナのことはどうするんだ? 添い寝だけとはいえ、俺たちが一夜を共にしたら、あの娘はどう思う?」


 俺がそう聞くと、ユアは困ったような顔をした。


「添い寝するなら、アイナも一緒だ。そうでなければ一晩一緒には過ごせない」


 俺がそう言うと、ユアは


「分かった……」


 と短く返事をして、ちょっと悲しそうに戻っていった。

 なんか、すごく惜しいことをしたような気にはなったが……それが原因であの二人の仲が悪くなっても困る。これで良かったんだ、と自分に言い聞かせたのだが……。


 十分後、今度はアイナとユアの二人で俺の寝室へとやってきた。

 そしてアイナの一言が、その行動の理由を明確にしてくれた。


「私たち、父親と呼べる人と一緒に寝たことがないのですぅ……」


 どうやら、二人とも余程幼いときに父親と別れたらしかった。

 いや、そもそも両親の存在を知らない、と言っていたような気がする。


「私たちのボロアパートを見たときに、こんなところに住んでいるのか、と呆れたことも、自分の部屋に泊まりに来ればいい、と言ってくれたことも、とっても嬉しかったですぅ。ちょっと叱られもしましたけど、そう言うのも含めて、パパさんは本当のパパさんと思えてしまいましたぁ!」


「……なるほどな……まあ、そういうことなら……娘二人、一緒ならいいかな……」


 幸いにも、俺のベッドは大きめだ。三人並んで眠ることもできる。

 とはいえ、普通ならばあり得ないシチュエーションなのだろうが、ひょっとしたら、これも「父性愛」の作用なのかもしれない。二人の金色のオーラが、より強く感じられたのだから……。


 ――さらに数十分後、俺の両腕にしがみついて、すやすやと眠るユアとアイナ。


 十代後半、二人ともそれなりに胸の膨らみも感じられるのだが、そうやって無邪気に眠る姿は、まるで双子の幼い女の子の様にも思える。

 ミリアの時もそうだったが……それだけで、本当の父親になったような幸せを感じられた。


 しかし、そう思うだけでは、本当の意味で父親のようになれたわけではない。

 厳しく、この娘達を育てなければならないのだ。

 ミリアの場合は、すでに明確な意志を持って女優の道を歩み始めていた。

 だが、この二人はまだ新米のハンターに過ぎない。


 明日から、さっそく厳しく鍛えてやろう……そう思ったが、とりあえず今日のところは、父親としての幸せを感じながら、心地よい眠りについたのだった――。

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