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覚悟決めるですぅ……

「そんな……一緒に暮らすって、どうして……」


 クールなユアも、ちょっと慌てたようにそう言ってきた。


「このアパートは危険だ。大きなヒビが入って、いまにも崩れそうじゃないか。それに、こんな錠じゃすぐに壊される。乱暴な男が押し入ってきたら連れ去られかねない」


「……それはそうかも、だけど……でも、私達がおじさんの部屋に泊まったとして、おじさんにそうされないと言い切れるの?」


 ユアにそう言われて、はっと気づいた。

 俺たちは今日……というか、ついさっき出会ったばかりなのだ。


「そうか……それもそうだな。君らにとっては、俺も見ず知らずの男なんだな。警戒してあたりまえか……けど、ここじゃあまりに危ない」


「……私たちを強引に部屋に泊まらせようとするおじさんの方が、よっぽど危ないと思うけど?」


 うっ……まだ十代の小娘に反論され、言い返せない。

 彼女の言うことはもっともだ……俺はなぜ今日知り合った彼女たちのために、これほど熱くなっているのだろう……。

 と、その様子を見ていたもう一人の少女、アイナが、吹き出すように笑った。


「うふふっ……なんか、ユアとおじさま、本当の親子喧嘩しているみたいで、おかしいですぅ……でも、ちょっといい感じですぅ。私たち、その本当の親を知らないのですからぁ……」


 彼女に指摘され、俺とユアは顔を見合わせる。

 心なしか、彼女の顔は赤くなっていた。


「それに、ちょっと嬉しいですぅ。おじ様からは、なんていうか、悪意が感じられないっていうか……本当に私たちのことを心配してくれているみたいですぅ。ありがとうございますぅ」


 アイナは、そう言って律儀に頭を下げた。


「いや……うん、心配しているのは本当だが、ちょっといきなりすぎたな……どうしても放っておけなく思えたんだ」

「……ほんとに、変な人……でも、まあ、アイナの言うとおりちょっと嬉しいよ。ありがと」


 そういって笑顔をみせるユア。

 いままで警戒している顔か、すました顔しか見たことがなかったので、その表情にはドキリとさせられた。


「それで、えっと……まずは、おじさまはどういう方なのか、教えていただいていいでしょうかぁ? 三ツ星ハンターの凄い人、っていうのは、ユアから聞きましたけど、ですぅ」


 相変わらず間延びした口調でそう聞いてきた彼女。

 俺としては、この崩れそうなアパートから今すぐ出て行きたかったが、この二人のことを放っておけないし、かといって強引に連れ出せばそれこそ人さらいだ。ここはゆっくり話しをすることにした。


 俺が中級の攻撃魔法と剣術を組み合わせる魔導剣士であること。

 特定のパーティーに属しているわけではなく、雇ったり、雇われたり、時にはソロで遺跡やダンジョンを攻略していること。

「パパ活」はまだ始めてから日は浅いが、本格的に契約したのはまだ一人しかいないこと。


「……その一人って言うのが、ミリアなのね……」


 ユアが、感嘆のまなざしで俺を見ながらそう聞いてきた。


「ああ、そうだ……なんていうか、相性が良かったっていうことかな」


「……ユア、ミリアってだれですかぁ? 知ってる人ぉ?」


「劇団ラージュのミリアよ。この前、一緒に演劇見に行ったでしょう?」


「……えええぇっー! あの売れっ子女優のミリアさんですかぁー!」


 あまりの大声に、俺の方が驚いた。

 このボロアパートだと、建物中に聞こえてしまいそうな声量だった。


「ば、ばか、声が大きい……ユア、秘密って言っただろう?」


「そうだけど、アイナならいいかと思って……おじさんも乗ってたじゃない」


「ま、まあ、そうだが……アイナ、絶対秘密だぞ!」


「は、はいぃ……って、そんなの誰にも信じてもらえないですぅ-。ユア、ほんとのことなの?」


「うん……おじさんとミリアが親しげに話をしているところ見たし、私のことを『姉妹』って言ってたから……『パパ活』してたのは間違いないと思う。それで、おじさん……えっと、ミリアと一緒に住んでたの?」


「……俺の口からは言えない」


「……住んでたんだ……でも、有名になっちゃったから、逃げられたってことね?」


「だから、ノーコメントだ」


 妙にカンの鋭い娘だが、ここは黙っておいた方がいいだろう。


「……でも、あの娘もおじさんのこと、慕ってたみたいだった……そういう意味じゃ、それだけでもおじさんのこと、結構信用できる……かも」


「……わたしも、おじさまはいい人そうに見えますぅ……なにか、金色の後光が差しているようにも見えるですぅ」


「えっ、アイナも? ……実は私も、なんかそんなふうに見えるのよね……不思議」


「……二人とも、そうなのか……実は、俺からも、二人から金色のオーラが出ているように見える……ミリアもそうだった」


「ふーん……やっぱり不思議な感じね……」


 ユアもアイナも、興味をそそられているようだった。


「……これはひょっとして、俺のオリジナルスキルに関係しているのかもしれないな……ちょうどいい、二人には話しておく。これも秘密のことだぞ」


 念押しした上で、俺は神から与えられたオリジナルスキルについて話した。


『父性愛』……自分の娘や息子を想い行動するとき、その能力が大幅に向上すること。それと同時に、対象者の才能開花を後押しすること。

 ミリアが役者として成功したのも、自分の影響が多少はあったと思われること――。


 いきなり聞いただけでは到底信じられないような荒唐無稽な話に、笑われるんじゃないか、と思った。

 しかし、二人とも真剣に聞いてくれた。


「……なるほど、女優・ミリアの成功を見てるから、すごく説得力があるね……それに、その金色のオーラが神様の力っていうのを信じさせてくれる……」


「すごいですぅ、おじさま……神様からそんなすごい能力を授けられていたなんて……これは運命ですぅ」


 意外と素直に信じてくれたようだ。  

 そして二人は、顔を見合わせてうなずきあった。


「……うん、私たち、おじさん……ううん、パパのこと、信用するわ。どうせこのままじゃあ、来月のここの家賃支払いもできなくなって、野宿するか娼館に入るしかなかったし……」


「そうですぅ……おじさま……ううん、パパさんは、本当の私たちのパパさんですぅ。いっしょに住まわせてもらえるなら、こちらこそ願ったり叶ったり、ですぅ。いつまでも子供でいられないし……私も覚悟決めるですぅ……」


 赤くなりながらそう話すアイナに、彼女がちょっと誤解していることを悟った俺は、


「いや、君たちに手を出すようなことは考えていないから……」


 と弁明した。

 それを聞いたアイナは、


「あの、その……早とちりしちゃいましたぁー」


と、ますます赤くなったのだった。


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