プロローグ
適当に書いてポンとだした小説なので悪しからず
楽しんで頂けたら幸いです
二時限目と三時限目の授業の合間、つまり休み時間で騒々しいこの2ーB組の教室で、俺はふと教室を見回す。
教室の窓際近くでは、クラスの陽キャ……所謂一軍が集まって雑談をしていた。陽キャと言っても、そこんじょそこらの陽キャとは全く毛色が違う。
まず、そのまとまりの中でも中心にいる茶髪の爽やかイケメン、神楽崎 龍夜。彼は名前のキラキラ臭から察せられる通り、とても主人公然とした少年である。容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群、性格聖人という要素の塊だ。異世界転移とかしたら絶対勇者になるやつ。
……しかし、俺は知っている。最近のラノベの風潮では、こういうタイプは得てして主人公にはなれないのだ……。
話がズレた。次は、その龍夜の隣にいる優しそうな黒髪ロング美少女、雨ノ宮 花咲。龍夜と幼馴染だという彼女はその余りにも美し過ぎる美貌と天使のような性格で、男女共に虜になってしまうような女性である。今も可憐な笑みを浮かべて龍夜の話に相槌を打っている。く、羨ましい。
3人目は、彼等の会話を見守る大和撫子を体現したような黒髪ポニテの美少女、霧鳴 怜。霧鳴流剣術道場の当主で、剣の腕は超一流、勝てる人はほぼ居ないとまで言われるほど凄いらしい。男らしい口調にその美麗な容姿から、男子だけでなく数多くの女性にもモテ、『お姉様』と慕われている。
4人目は、金髪に染めた髪が目立つ彫りの深いイケメン、獅子山 狼牙。龍夜と並ぶキラキラしたその名前が表すかのように、とても喧嘩っ早い。しかし、一方で人情に熱く、仲間思いという、龍夜というThe ヒーローのような龍夜の親友として相応しい。
さらに、4人は幼馴染だ。
どうだ、そこんじょそこらの陽キャと違うだろう?そう、ラノベとかでよく出てくる異世界転移系で勇者パーティとなるべくして生まれたような4人なのである。
これはもう異世界転移まったなしである。……流石にそんな妄言は信じてないが。
「なぁ、お前もそう思うだろ?」
「なにがだよ……」
そんなことを考えながら、俺は隣に座る暗めの少年に問う。少年は、気だるげに俺の問いに答えてくれた。
彼は小林 遙稀と言って、オタクの少年である。ボサボサの黒髪に平々凡々とした顔で中肉中背。先程紹介した奴らとは似ても似つかない彼は、まさにモブ。オマケに、クラスの不良みたいな奴らに悪い意味で絡まれている。
しかし、これまた俺は知っている。最近のラノベでは、こういうやつこそ異世界転移後に無双スキルを入手し主人公となるのだ。まあ、異世界転移しなきゃ全く主人公じゃないモブなのだが。
───────おっと、俺の紹介が遅れたな。俺は黒川瑞樹。遙稀の友人であり、平々凡々な凡人、モブの一人である。小学6年生頃くらいにラノベにハマり、以降日々異世界転移した後のことを妄想し、高校2年生になってしまっている痛いヤツなのだ。
そんな俺だから、このクラスになった時は興奮した。だって、ラノベによく居るイケメンや美少女に加え、最近多いラノベの主人公である凡人系少年が居たのだ。
これに興奮しないヤツはオタクじゃない。否、俺じゃない。
正直、俺は主人公になりたい訳では無い。異世界転移した彼等の顛末を傍で見ていたいのだ。
……まあ、そう考えている内に夏休みは終わり、二学期に突入しているにも関わらず相変わらずそんなことは一切起きないので、諦めかけているが。だがもし、異世界転移をしたのなら遙稀の事を全力で陰ながらサポートする所存である。
「はぁ……異世界転移しねぇかなぁ」
「何言ってるんだ、そんなこと現実にあるわけないだろう」
俺のボヤキにすぐさま突っ込んでくれる遙稀。そうだよなぁ……現実にそんな都合のいい展開が起きる筈ないんだよなぁ。
はぁ……異世界転移の魔法陣、出てこねぇかなぁ。
俺が心の中でボソッと呟いた次の瞬間。
教室の真ん中に巨大な魔法陣が現れた。
「な、なんだ!?」
「なんだこれ!?」
クラスがどよめく。遙稀を見ると、目を見開いて驚いていた。龍夜達を見ると、4人も困惑していた。
「な、なんなのこれぇ〜!?」
一際情けない声で戸惑っているのは担任の波風 愛子先生。小柄で愛らしい先生で愛ちゃん先生と慕われている───いたのか先生。
今入ってきたのだろうか。だとしたら運の悪い事だ。
というか教師が生徒より情けない声出すなよ。
ツッコミながら、俺は心の中で歓喜していた。
やっと異世界転移できる!リアル異世界転移モノを見られる!────────と。
よっしゃ待ってろよ異世界!そしてリアルラノベストーリー!
そう心の中で叫びながら、困惑と驚愕に固まるクラスの生徒達と共に、魔法陣の輝きに飲み込まれていくのだった。