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森の中で二人と出会った。

 テイラーは、森の中の水辺で目を覚ました。


「……あれ、俺は確か勇者パーティを追放されて、殺されたはずじゃ」

 周囲を見渡しても、青々とした木々と清流があるだけで、バーナード達の姿は見当たらない。


「状況を確認しよう。剣なし、革鎧なし、路銀なし。普段使い用のナイフもとるなんて、徹底して奪っていったんだな。

 あるのは血の付いた普段着と、いつの間にか足に括り付けてあった小包だけか」


 足に括り付けてあった、セレナが愛用していたはずの小包の中には、鞘付きの短剣といくらかの路銀が入っていた。


「バーナードに斬られた傷も、大治癒でもかけたみたいに治っている」

 しかし、彼女は俺を殺すといったはず、と考えて思い直した。


 彼女は適切に処理するとしか言っていない。恐らく、彼女の思う適切な処理を行った結果なのだろう。


 そんな屁理屈でバーナードを騙そうなんて、一歩間違えば自分も死にかねない危ない橋だ。

 あの状況から俺を助けてくれただなんて、次に会うことがあったら、セレナには礼を言わなければいけないな。

 バーナードにああ言わなかったなら、間違いなく俺は殺されていただろう。


「それにしても、バーナードは野放しにしておくには危険すぎる。世襲貴族で気位の高い奴だとは思っていたけど、指摘したことは素直に聞いていたのに。猫をかぶっていたのか? まあ、今は寝床を見つけないと」


 まだ昼下がりといった時間帯だが、それなりに疲弊しているし、野営に必要な道具も持っていかれてしまっている。


 最低でも雨風をしのげる場所を見つけないといけないと思い、周囲を探っていると、レザーコートと短剣で武装した少女と、茶色のチュニックを着た背の低い少女を見つける。

 二人は山賊に囲まれて、追い詰められているようだ。


「せっかくお頭がこの村とオマエラに目をつけたってのに、助けを呼ぼうなんてフテー奴らだなぁ! オトナしく俺たちの養分になれよ!」


「略奪者どもが随分な態度ね。王様にでもなったつもり? クラウディア様には指一本触れさせないから!」

「……気をつけて下さい、コリン」


「オマエラ二人で六人に勝てるわきゃねーだろ! とっとと諦めたらどうだ!」


 この状況を見てどちらに助力するかなんて、そんなことは決まっている。ちょうどいい八つ当たりの的が、こんなところに現れてくれたことに感謝したいくらいだ。


「違うな。二対六じゃなくて、三対六だ!」

 俺はそう言うとともに山賊の背後を取り、一瞬で二人を殴り倒した。


◇◆


 山賊にしては統制が取れた動きだったが、正直俺の敵ではない。それよりも、背の低い少女が俺に魔法をかけようとしてきて失敗し、それからずっとこちらを観察していることのほうが気にかかった。


 大方、自分たちに助太刀しに来た俺に強化魔法をかけようとしたが、不発だったことを不思議に思っている、といったところだろうが。


「やば、彼奴つえーぞ! 女どもを人質にしろ!」

 山賊の一人が叫ぶ。呼応した残りの一人が背の低い少女の方に掴みかかろうとする。


「クラウディア様!」

「大丈夫、『俺が前にいる限り、仲間には傷一つつけさせない!』」

 山賊は見えない壁にぶつかり、地面に倒れ込む。俺のスキル『守護聖人』の力だ。

「仲間は気絶したようだが、まだ続けるか?」


「チッ、覚えてやがれ!」

 仲間を見捨てて逃げていったか。判断が早いな。


「勝手に助太刀させてもらったが、大丈夫だったか?」


「いえ、とても助かりました。ありがとうございます」

「ありがと! 助かったよ。あたしは従者のコリン、この方はクラウディア様。あなたは?」

「俺はテイラー。勇者パーティの戦士、だった」少し苦い顔をしながら、だったと付け加える。


「元戦士!? ただものじゃないとは思ったけど、まさかテイラーさん元勇者パーティの方だったなんて! もうそんなの実質勇者じゃないですか!」


「いやいや、実質勇者って大げさな……さっきは相手が山賊だったから勝てただけだ。そう大した力はないよ」


 コリンは俺の肩書きを聞き目を輝かせるが、勇者パーティを追い出された俺を、あまり過大評価されても困るんだがな。


「謙遜なさらないでください、テイラー様。一握りの人間しか扱えないスキルを、しかも敵の攻撃を無効化するような強力なスキルを使用できるなんて、素晴らしい力だと思います」

 クラウディアもそういって、俺を認めてくれた。


 俺のスキルは、自分の力を誇示するために勝手に突出する勇者と呪文使いがいた勇者パーティでは、ほとんど死にスキルだったけど、認めてくれる人もいるんだな。

 そう思うと、少し嬉しくなった。


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