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その②


 へー、そんなシステムが。


 序列闘争って名前は前に神奈崎から聞いたような気はするのだけれど。


 もし僕らがAクラスを倒してその地位を奪うことが出来れば、俺の復讐―――ニィおばさんの仇討ちにも近づくかもしれない。


「神奈崎はもちろんAクラスを狙いに行くんだろ?」

「当り前ですわ。この日が来るのを楽しみにしていましたのよ。わたくしがEクラスに決まったあの日からずっと」


 神奈崎が不敵な笑みを浮かべる。

 その間も学園長の話は続いていた。


『この序列闘争はクラス代表三名一グループによる勝ち抜き方式で行い、最初にEクラスとDクラスの対戦から始めます。対戦は、一対一の戦闘によって行われ、いかなる手段を用いようとも相手を圧倒した方を勝者とします。この試合を勝ち抜いたクラスがCクラスと戦闘を行います。こうして勝ち抜いたクラスは最終的にAクラスとの試合を行い、全試合の勝敗を見たうえでクラスのランク付けを変更します。これが序列闘争の全容です』


 なるほど。


 つまり、俺達EクラスがAクラスを倒すためには最低でもDからBまでのクラスとの試合を勝ち抜かないといけないわけだな。


 ……それってめちゃくちゃ不利じゃない?

 俺たちは連戦を重ねた末にAクラスと戦わなきゃいけないわけだろ?


 それとも、Aクラスに返り咲きたいならそのくらいのリスクとかハンデは負って当然とでも思われているんだろうか。


 なんかやる気無くなって来たな……。


「本当に勝てるのか、俺達?」

「不安がる必要はありませんわ。わたくしの実力はAクラスにも負けていないと自負しておりますのよ。Bクラス以下の有象無象など小指の一本で倒して見せますわ」


 すごい自信だ。


「じゃあ、神奈崎に任せるよ。うまいことやってAクラスの座を奪い取ってくれ」

「何を他人事みたいに言っておられますの? もちろん真白も一緒に戦うんですのよ?」

「え、俺も?」

「当然ですわ。悔しいけれどあなたの実力はわたくしに匹敵すると言わざるを得ませんし、それにわたくしがEクラスに落ちたのはあなたの責任でもあるのですわ。借りは返していただきます」


 いやそれはお前が列に割り込んで来たから……と言いかけてやめた。


 学園長の話によると、この序列闘争はクラス代表の三人が一チームになって行われるらしい。


 その三人の中に俺が選ばれるかもしれないと考えると、序列闘争を神奈崎一人に任せておけばいいという話でもないわけだ。


 仮にも上位クラスの生徒との戦闘を重ねるのだから、俺自身の実力を測る意味でも参加するのは悪くない。


「……わかったよ、神奈崎。俺と君でAクラスに成り上がろう」




 

「さて、学園長からお話があった通り、序列闘争が行われる。それに向けてメンバーを選抜したいが、誰か希望者はいるか?」


 教室に戻って早々、斬沢先生は教壇に立ちながら言った。

 それを聞くや否や神奈崎が右手を上げる。


「わたくし以外に考えられませんわ! 勝利の栄光をEクラスにもたらして差し上げます!」

「そうか。なら、神奈崎の他にあと二人必要だな。誰かいないか?」


 闘争というくらいだから身体が無事に済むという保証はないはずだ。


 それなのに、こんなクラスの係決めみたいな雰囲気で決めちゃっていいのかなー、なんて思いつつ、俺も手を上げる。


「俺も参加します。どのくらい通用するかは分かりませんが」


 まあ、俺に限った話で言えば、少なくとも死ぬことはないだろう。

 危ない目に遭うのを肩代わりしてやるようなものなんだから感謝してくれよ、栄えあるE組のみんな―――。


「うわ、やっぱり()る気だよ……」

「始めてみた時から目の色が違うと思ってたんだ」

「さすが、血に飢えてるって顔してるものな」


 全く感謝されてない!


 むしろ悪評が広がってる!


 そんなに日ごろの行いが悪かったか!?


 くそー、今度雨が降った日には捨て猫を探して拾ってやることにしよう。それを見かけた誰かが俺のことを見直してくれるに違いない。


 とにかくこれで二人は確定した。

 問題はあと一人、誰が序列闘争に参加するかって話だけど……。


 周りを見渡しても誰も手を上げようとしない。


 まあ、わざわざ自分から危険に首を突っ込もうなんてやつはいないか。


 しかしこのままだと人数が足りなくなっちゃうよな。


 その場合どうなるんだろう。


 まさか不戦敗?


 そんな風に、なんとなく嫌な空気が漂い始めたときだった。


「じゃ、じゃあ私が」


 そう言って手を挙げたのは、なんとユイだった。

 クラスがざわつく。


「ゆ、ユイ、どうしてお前が?」


 思わず俺が訊くと、ユイは、


「エルさんや神奈崎さんだけに戦っていただくわけにはいきません。私もクラスのために戦います!」

「でも、ユイ、魔法使えるの?」

「私だって魔導学園の一員です! 今は使えなくても、本番までには使えるようになって見せます!」


 は、果てしなく不安だ……っ!


 だけどせっかくユイもやる気になってくれているし、他に参加してくれる人もいないだろうし、最悪俺と神奈崎で二勝すれば問題ないし、ここはユイの意思を尊重しよう。


「わ、分かった。俺もユイが魔法を使えるようできる限りサポートするよ」

「エルさんの力があれば安心です!」


 ユイが力強くガッツポーズする。


「……何はともあれ、これで三人だな。分かった。お前たちの健闘に期待する」


 斬沢先生がそう言って、その場は解散になった。





 一日の授業も終わって教室を出ようとしたとき、見知らぬ生徒に声をかけられた。


「よぉ、不良少年」


 そいつは髪を真っ赤に染めていて、唇にはピアスまでつけていた。


「……どっちかというと、君の方が不良に見えるけど?」

「うん? これか? これはファッションだよ。俺は優等生なんだぜ! Eクラスだけどな!」


 赤い髪を触りながら、その男子生徒は言う。

 っていうかこいつもEクラスだったのか。

 まあ、同じ教室にいるんだからそれはそうか。


「で、何の用?」

「冷てえなあ。俺は発動木(はつどうき)ジン。非公認団体、Eクラス応援団のリーダーなんだぜ!」

「Eクラス応援団?」

「そうさ。序列闘争ってのがどんなもんかは知らねーけどよ、応援の一人もいなけりゃさみしいだろ? 俺たちはクラスのために戦ってくれる真白たちを応援しようって集団なのさ」

「……気持ちは嬉しいけど、どういう風の吹き回し? 俺は不良なんだろ? あんまり関わらない方がいいんじゃないの?」

「つれないこというなって! 俺は喧嘩はてんでダメだが、お前たちの力になりたいと思ってんだよ。ま、当日を期待してな。度肝を抜いてやるぜ!」


 俺の肩を叩きながら、ジンという少年は廊下を歩いて行った。


 ……一体何なんだ、あいつ?

 まあ、気にしないでおこう。



※ 




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