その㉕
「というわけだそうですので、よろしくお願いしますね」
そんなセカイを追ってユイも部屋を出ていく。
そうなると、当然部屋には俺と神奈崎、そしてドゥーエちゃんが取り残されたことになる。
ことになるというか、ことになっている。既に。
「……遊ぶって言っても、俺は三人以上と一緒に遊んだ経験なんてないよ」
理由は単純。
おばさんと二人暮らしだったからだ。
「わたくしもですわ。お屋敷には同世代の子なんていませんでしたもの」
「え。それでよくドゥーエちゃんと遊んであげるなんて言えたね?」
「言ったのはセカイですわ。わたくしに責任を押し付けないでくださる?」
「……そういえばそうだったかも」
ええい、セカイめ。
適材適所って言葉を知らないのか?
「ねーねー二人とも、怖い顔してどうしたんだよ? あたしと遊んでくれるんじゃなかったの?」
落ち着きなく体を揺らすドゥーエちゃん。
一刻も早く遊びたくてどうしようもないらしい。
そんなドゥーエちゃんの前に神奈崎が屈みこむ。
「エリートの誇りにかけても約束は守って見せますわ。それで、ドゥーエちゃんは何をして遊びたいのです?」
「あたしが決めていいの?」
「もちろんですわ」
「えー? それじゃあねえ、えーと、どーしよっかなー」
ふと、俺はドゥーエちゃんと目が合った。
ドゥーエちゃんはそのままじっと俺を見つめた。
「なんだよ。俺の顔に何かついてる?」
「思いついたんだよ。エル君が鬼ね!」
「鬼? 誰が? ……俺が?」
一体どういうことだろう。
何か深い意味でもあるのだろうか。
なんてことを俺が考え始めた時には、既にドゥーエちゃんと神奈崎は部屋を飛びだしていた。
俺もそれを追って部屋を出て、考える。
……ああ、そうか。
鬼ごっこね、これ。
俺のことを鬼だとかなんとか言っているのかと思った。
ちょっと被害妄想が過ぎるな。もっとポジティブにいこう。
「待ってよ二人ともーっ! あははーっ!」
――いやダメだ。
このキャラには無理がある。
ポジティブタイム終了。




