その㉔
あ、とセカイが声を上げる。
「今日も休みっすけど、皆さん何か予定があるっすか?」
「俺は別に。ああ、筆記の課題がいくつか出てるくらいだけど」
「わたくしもですわ」
「……ユイは?」
「あ、もちろん私も時間を持て余してますよ!」
セカイはその場にいる全員の顔を眺めながら、
「それじゃあ今日はドゥーエちゃんと遊んであげる日ってことでどうっすか?」
「えー!? みんなあたしと遊んでくれるの!?」
分かりやすくテンションが上がっているドゥーエちゃん。
「……まあ、わたくしは構いませんわ。庶民の面倒を見るのもエリートの役目ですし。真白は?」
「断る理由はないかな。最初の休みだからって、家に帰るような予定もないし」
帰るような家もないし。
「私も良いですよ。ドゥーエちゃんのこともっと知りたいって思ってますから」
「わーい、あたし嬉しいんだよ。先に部屋に戻るから、みんなも早く来てね!」
ドゥーエちゃんは慌ただしい様子でパンを食べ終えると椅子から飛び降り、食堂から出て行った。
それを見た神奈崎はため息をついて、
「わたくし、あの子についていてあげますわ。本当にお行儀の悪い子なんだから……片付け、お願いしますわね」
と、ナイフとフォークを置いて、ドゥーエちゃんを追って行った。
「……で、セカイ」
「なんすか、アニキ?」
「ドゥーエちゃんと遊んであげようなんてどういうつもりなんだよ?」
「どういうつもりとはどういうことっすか? それじゃまるでウチに下心があるみたいな言い方じゃないっすか」
「いや、そのつもりなんだけどね」
「……善意っすよ善意。だから、ドゥーエちゃんが遊んでいるうちにあの子のお兄様って人を探すっすよ」
「お兄様? ……ああ、そういえばお兄様に会いに来たとか言ってたような」
「そうそう。それでウチがそのお兄様って人を見つけ出せばドゥーエちゃんもきっとウチに恩を感じるはずっす。そうすればあんなことやこんなこともやってくれるはず。ぐふふ」
セカイの中では善意と下心が同じ意味なのかもしれない。
※※※
「えーと、それじゃあウチとユイさんでドゥーエちゃんのお兄様って人を探してみるっす。アニキとレエネお嬢はドゥーエちゃんの面倒を見ていてくださいっす。ドゥーエちゃん、ウチが君の探し人を必ず見つけ出してあげるっすからね! その暁には……ぐへへ」
「おいセカイ、よだれ出てるぜ」
「おっとこれはいけない。とにかくウチらにお任せください! では!」




