その㉓
ユイは布団を被って、俺の隣に座る。
ちょうど俺はユイとセカイに挟まれる形になった。
ふわあ、とユイがあくびをする。
「なんだかまだ眠いですねー。私もう少し寝ますね」
「あ、ああ、うん」
ユイは自然な様子で俺の方に体を傾け、こちらに寄り掛かるようにして寝息を立て始めた。
「……セカイ、代わってあげようか」
なんとなく気まずくなった俺はそんなことを言いながらセカイの方を見た。
しかし、その時には既にセカイも眠りについていた。
安心しきったような安らかな寝顔だ。
「…………」
両脇にいる二人の体温のせいで、ますます俺の体が温まる。
いや、多分それだけが理由じゃないだろう。
あーあ、一体どうしてこんなことになったんだか。
目を瞑っても、二人の寝息や体の感触が気になって全く眠れそうな気配もなかった。
※
「……その顔、どうしたんですの?」
朝。
食堂で会って開口一番、神奈崎はそんなことを言った。
「誰のせいだと思ってるんだよ……!」
結局あの後、俺は一睡もできなかった。
しかも、なんか余計に疲れた気さえする。
「ウチらは熟睡でしたけどねえ? 一体どうしたっすか、アニキ?」
テーブルに座りながらセカイが言い、ユイも頷く。
「まさか私たちに挟まれて興奮しちゃいました?」
「ば、馬鹿、そんなわけないだろ!」
「大体、真白は素直過ぎるのですわ。適当な頃合いを見計らって部屋に戻っていらしたらよかったのに」
上品にフォークとナイフを使い、朝食の卵料理を口に運びながら、神奈崎は俺の方を見た。
「いまさらそんなこと言われても困るんだけど」
「まあまあ落ち着くんだよエル君。朝からイライラしてたら一日持たないんだよ。高血圧になったら大変なんだよ?」
神奈崎の隣にはドゥーエちゃんが座っていて、ちぎったパンを口の中でもぐもぐさせていた。
「あのねドゥーエちゃん、元はと言えば君が悪いんだからな」
「うわー、あたしみたいな幼女に責任を取らせようとするなんてあんまりなんだよ」
「…………」
いいよなあ、子供はっ!
くっそー、こんなのを相手にしている俺が悪いのか?
子供相手にイライラしても仕方ないのか?
「ほら、朝ご飯が冷めちゃうんだよ。早く食べた方が良いんだよ、エル君」
「はいはい、分かりましたよ」
「あたしが食べさせてあげよっか?」
「子供の世話になるまでもないよ」
「エル君だってまだ子供なんだよ……」
「うるさいなあ。食事中のお喋りも度が過ぎるとマナー違反だよ」
「寝不足だからって自分より小さい子に当たるなんて、真白もまだまだ子供ですわねえ」
神奈崎だ。
「一体誰のせいで寝不足だとお思いですか!?」




