その㉑
「変な時間に目が覚めちゃったな。どうする神奈崎、また朝まで寝――」
神奈崎の方を見ると、なぜか彼女は人差し指を鼻の頭に当てていた。
静かにしろ、というジェスチャーだ。
「……?」
神奈崎は、いまいち状況の分かっていない俺のすぐ横を指さす。
そちらの方へ視線を向けると、そこではドゥーエちゃんが布団を被って眠っていた。
こんなにうるさい中でよく眠れるものだ。
小さい子ってすごい。
「ほら、代わりなさい真白」
「か、神奈崎、いつの間に俺の隣に?」
どれだけ気配と物音を消して近寄って来たのだろう。
静かすぎて全く気が付かなかった。
「あなたの布団というのが気に入らないけど、我慢してあげますわ。ほら、場所を譲りなさい」
囁くように神奈崎が言う。
「どういうつもり?」
「わたくしがここで寝ますわ。そうじゃないと、ドゥーエちゃんがどんな目に遭うか分かりませんもの。それとも何? もしかしてドゥーエちゃんと一緒の布団で寝たいのかしら?」
神奈崎が軽蔑するような目で俺を見る。
「いや、そんなことは思ってないけどさ。じゃあ俺はどこで寝ればいいんだよ」
「さあ? 廊下で寝たらいかがかしら?」
「ろ、廊下……」
「ほら、さっさと退いてくださる?」
遠慮なく俺の布団の中に入って来る神奈崎。
もちろん寝間着姿だ。
制服やいつも着ている服と違って体のラインが妙にはっきり見えるから、なんかえっちだ……。
まあ、それもこの一週間で見慣れたけど。
とにかく、この状況を他の誰かに見られたらまた面倒な誤解を生みそうだったので、俺は大人しく布団から出た。
あーあ、なんで俺がこんな目に遭わなきゃなんないのかね。
ちょうど俺が部屋のドアに手を掛けた時、神奈崎に呼び止められた。
「あ、ちょっと待ちなさい、真白」
「何?」
と、俺が振り返った瞬間、大きな布が飛んできた。
毛布だ。
「廊下は寒いだろうから、それを使わせてあげますわ。ありがたく思いなさい」
そんな気遣いができるなら、俺を布団から追い出すようなことをしないで欲しかった……。
廊下に出ると、足元にセカイが転がっていた。
「あれ? アニキも追い出されたっすか?」
「うん。理由はよく分からないけど」
「ははーん、さては何かやらしいことをしたっすね? お嬢の胸でも触りましたか?」
「いや全く」
触ったって減るものじゃあるまいし。そのくらいさせてもらってもバチは当たらないはずだけど。
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次回の更新は12月6日、7時半ごろの予定です!
予定ですのであしからず。
念のため申し上げますと本作は一応ランキング一位を目指しております!
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次回もサービスサービスぅ!




