その④
※※※
夜になり、僕とニィおばさんは夕飯を食べていた。
畑でとれた野菜のスープと、近くでとれた魚のムニエルだ。
「ずいぶん急な話だよね、明日の朝って」
ぼくが言うと、
「謝るしかないんだよ。エル君にまた我慢させちゃってごめんね」
「いや、おばさんが悪いんじゃないんでしょう?」
スープを飲みながら、ニィおばさんが頬を膨らませる。
「おばさんじゃなくてお姉さん」
「あ、うん。えーと、ニィお姉さんは何も悪くないんでしょ? ちょっと都合が悪くなったってだけだよね?」
「そう、ちょっと都合が悪くて。……理由は聞かないで欲しいんだよ」
何かを懇願するような目でニィおばさんが僕を見る。
その表情はまるで小さい子供みたいだった。
そんな顔をされると、ぼくは何も言えない。
「分かってるよ。とにかく、明日までに荷物をまとめないといけないんだよね」
既にぼくの部屋のものはほとんど片付けてある。あとは、リビングにある家具をどうやって運ぶかだけど、その辺りはニィおばさんが魔法でどうにかしてくれるだろう。
せめて今夜は明日の備えて早めに寝ようかな。
「ぼく、お風呂の準備をしてこようかな。今日は早く寝なきゃ。ね、おばさん。……おばさん?」
「――え? ああ、うん……いや、エル君。あたしから離れちゃダメなんだよ」
「どういうこと?」
気がつけば、おばさんは今まで見たことのないような怖い顔をしていた。
玄関の方で何か物音がしたのはその時だった。
「……誰か家に入って来たの?」
「多分ね。だけど、向こうはあたしたちに気付かれていることをまだ知らない。だから、今のうちにここから逃げるよ」
「逃げる?」
「今は何も言わずあたしに従って。そうじゃなきゃ」
おばさんは一瞬何かを考えるように押し黙った。
それからもう一度口を開いて、
「エル君、死んじゃうから」
※※※
ぼくらの家に誰がやって来たのか僕には分からない。
だけど、ニィおばさんの表情から、どうやら悪いことが起こっているんだってことは分かった。
「出来るだけ足音を立てないで、あたしについて来て」
「う、うん」
ぼくらはリビングの窓から家の外に出た。
テーブルの上に食べかけの夕食を残したままで。
ニィおばさんは素早い足取りで家から離れ、森へ続く道へ歩いて行く。
ぼくは必死でそれを追いかけた。
もう辺りはすっかり暗いのに、おばさんの足に迷いはなかった。まるで闇の中でも目が見えているみたいだ。
「……思っていたより敵の侵攻が早かったんだよ」
「え?」
「エル君は気にしないで。今は歩くことだけ考えて」
おばさんがそう言った瞬間、ついさっきまで僕らがいたリビングが爆発した。
激しい音と衝撃が僕らを襲い、ぼくは誰かに押し倒されながら、ぼくらの家が崩壊していくのを見た。
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