その⑱
「……あーあ、怒らせちゃった」
「な、なんでウチをそんな目で見るんすか!? その場のノリじゃないっすか! ねえ!?」
「どうでもいいけど、フォーク刺さったままだよ」
「えっ!? う、うわ、結構深いとこまで刺さってる! 傷が残ったらどうしてくれるっすか!?」
恐る恐る額のフォークを引き抜くセカイ。
跡になったらお嫁にいけないって呟いた気がしたけど、気のせいだろう。
「それにしても、謎だよな」
「何がっすか?」
「ドゥーエちゃんのことだよ。どうやって俺たちの部屋に来たのかもわからないし、お兄様っていうのが誰なのかも分からない」
「あんまり気にしなくてもいいと思うっすけどねえ……」
再びセカイの方を見ると、フォークの突き刺さった跡から血が噴き出していた。
もしかすると結構重傷なのかも。
神奈崎も容赦ない。
出血に気付いたのか、セカイも慌てだす。
「わ、わ、ヤバいっすヤバいっす、ウチ死んじゃうっす!」
「大丈夫だよ、そのくらいならまだ死なない。俺が言うんだから間違いない」
「そりゃあ、アニキはなんかウチらより丈夫そうですから! ウチはか弱いから死んじゃうっす!」
だらだらと流れる血で顔中を血だらけにしながらセカイが訴えて来る。
「わ、分かったよ。あんまりはしゃぐと余計血が出るから大人しくしろよ。ほら、ちょっと見せて」
セカイが俺に額を寄せた。
額にはフォークの突き刺さった跡と思しき傷跡があった。
俺は傷口が塞がっていくのをイメージした。
……植物を育てる魔法の応用だ。木々を成長させるように、セカイの傷口を埋める。
「ほら、止まっただろ」
「え?」
自分の額を触って、血が出ていないのを確かめるセカイ。
「わー、ほんとっす! 凄いっすね、アニキ!」
「いや、大したことないよ。ユイ、タオルか何か持ってる? セカイの顔を綺麗にしてあげたいんだけど」
「持ってますよ。ほら、下井君、こっちに来て」
「はいっす」
ユイに連れられてセカイが食堂を出ていく。
多分洗面所かどこかへ行くのだろう。
人の怪我を治す魔法――治癒魔法と言うらしい。
真白さんの家で練習してきた成果が出た。
もしこの魔法をもっと前に使えるようになっていたら、ニィおばさんを助けることができたのだろうか。
……そんなことを考えながら、俺はスープを一口飲んだ。
既にそれは冷え切っていた。




