その⑮
そして不幸なことに、ベッドの上にはきょとんとした表情のドゥーエちゃんが座っていた。
ダカミアさんもドゥーエちゃんの存在に気付いたのか、彼女を見ながら眉を顰める。
「その子、誰なの?」
「え? えーとですね、この子は……」
ヤバい、こうなってしまうと最悪だ。
せっかくバレないように気を使っていたというのに。
どうしよう、言い訳なんて考え付かないぞ……。
「お兄様の妹なんだよ。お兄様、今日はお休みだって聞いたから、様子を見に来たんだよ」
「え?」
ドゥーエちゃんはぴょんと跳ねるようにベッドから飛び降り、俺の右手を握った。
「妹さん? そうなの?」
ダカミアさんが俺に視線を合わせる。
「あ、えー、まあ、はい。そうです。妹です。顔も似てるでしょ?」
「そう言われればそんな気もするなの……」
俺とドゥーエちゃんをじろじろ嘗め回すように見比べるダカミアさん。
どうせ見つめられるならもっと若い人が良かったなあ。
いやしかし、ダカミアさんもダカミアさんでまあまあスタイルいいし、三十代と言ってもまだ前半だし、きっと若い頃はそれなりにモテたんだろうな。
まあ、そんな人も今となっては若作りの寮母さんと呼ばれている。時の流れは残酷だ。
「うーん、確かに似てるなの。こんな小さな子が不審者なわけもないし、見逃してあげるなの」
「さっきから言ってるその不審者って何なんですか?」
「だから、寮の付近をうろうろしている人がいたなの。ほら、この寮は一応学校の敷地内にあるわけなの。だから、学校に侵入してきた人ってことになるなの」
なるほど。
もう少し詳しく言えば、Aクラスの寮は校舎のすぐ近くに、それ以下のクラスは成績順に学校から遠ざかるような配置で寮が設置されている。
つまり俺達の寮は校舎から最も離れた位置にあり、そして最もボロい寮ということだ。
学校の片隅のやぶだらけの場所に立っているから、夏場とか虫が入ってきて大変だろうな。
えーと、何の話だったっけ?
「とにかく不審な人がいるのですわね? 気をつけますわ。ご用はそれだけですの?」
「それだけなの。その子の入校手続きは私がしておいてあげるなの。だから、その子を帰すときはちゃんと言って欲しいなの。あと、変な人を見かけたらちゃんと知らせるなの」
「もちろんですわ。では」
神奈崎がダカミアさんを部屋の外へ追いやる。
それから俺達の方を向き直って、
「……ふう。何とかなりましたわね」
「一時はどうなるかと思ったけど、これでロリ……もといドゥーエちゃんと一緒に一夜を明かせるわけっすね!」
セカイ――こいつはドゥーエちゃんと何をするつもりなんだ?
女の子なら誰でもいいのか?
いやむしろロリだからこそいいのか?
性的嗜好というものは奥が深い。
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