その⑭
「うへへ、ロリがウチらの部屋に……ロリが……」
セカイがヤバい笑みを浮かべている。
こいつもこいつで大丈夫なのかな……。いつか捕まっちゃうんじゃないかな……。
「ちょっと失礼。子供の声が聞こえたみたいなのね」
ドアの向こうから現れたのは寮母のダカミアさんだった。
俺は咄嗟にダカミアさんの視界を塞ぐ位置に体を動かし、神奈崎とセカイは瞬時にドゥーエちゃんをベッドの中に隠した。
「ど、どうしました? 何かありました?」
俺が言うと、ダカミアさんは首を傾げた。
「さっき、あなたたち以外の人がいたような気がしたのね」
「まさかそんな。俺達以外の人なんてこの部屋にいませんよ。ねえ、ユイ」
「……もちろんですよ! 当たり前じゃないですか!」
「ふーん?」
ダカミアさんは訝しげな視線で部屋の中を見回す。
ベッドの布団は、ドゥーエちゃんで不自然にふくらんでいる。あまりじっくり見られると完全にバレてしまう。
何か言い訳をしなければ……。
「あ、あれかなー、ちょっと腹話術の練習をしてたんですよ。それで変な声が聞こえたのかも」
「腹話術? どうしてそんなことしないといけないのか、不思議なのね」
「いや、クラスメイト同士打ち解けるために劇でもやろうかなって。ねえ、セカイ」
「う、ウチっすか!?」
「……君が一番得意だもんな、腹話術」
俺は目に力を込めながらセカイを見た。
「ふーん、じゃあやってみて欲しいのね」
ダカミアさんも乗って来る。
「し、しょうがないっすね。いきますよ。ご、ゴホンゴホン。あ、あー(裏声)」
「ちょっとまだ見せられる段階じゃないんで、今度良かったら紹介しますよ。というわけで今日はこの辺りで」
俺はダカミアさんを無理やり部屋の外へ押し出そうとした。
「ちょ、ちょっと待って欲しいのね! 寮の近くに不審者がいたって話だからあなたたちも気を付けるのねっ!」
「分かりましたよっ!」
ドアを締め切り、さらに魔法で生やした蔦で封鎖する。
よし。これでもうあの人も入っては来れまい。
「いきなりどうしたの? あたし暑かったんだよー」
布団の中からドゥーエちゃんが赤くなった顏を出す。
「あの人に見つかると、色々とややこしいことになるのですわ」
「ややこしいこと?」
「そうそう。大体君が言ったんだろ? 俺が幼女を連れ込んだと勘違いされるとかさ」
「それに、あのダカミアって人は自分が独身なのを気にして、若い女の子に対する嫉妬心が物凄いらしいんすよ。ドゥーエちゃんみたいな子なんか取って食われちゃうかもしれないっすよ」
セカイがそう言った瞬間だった。
「……誰が若い子に嫉妬してるなのーっ!?」
ばきぃっ、と勢いよくドアが蹴破られ、ダカミアさんが姿を現した。
嫉妬のパワーは恐ろしい、と俺は思った。




