その⑬
「あらら、なんだか騒がしいですね? お客さんですか?」
開けっ放しになっていたドアからユイが顔を覗かせる。
「ああ、ユイ。女の子が俺達の部屋に入ってきちゃってさ」
「女の子?」
ユイの視線が俺からドゥーエちゃんに移る。
それに気づいたように、セカイを羽交い絞めにしていた神奈崎を眺めていたドゥーエちゃんが顔を上げた。
「……あ」
ユイの顔を見たドゥーエちゃんが、何かに気付いたように声を上げる。
「もしかしてユイの知り合い?」
「――いえ、違いますよ? こんな子、私知らないです」
なんか今妙な間があったような気がしたけど、気のせいだろうか。
「ドゥーエちゃん、この女の人知ってる?」
「ううん、あたしも知らないんだよ」
首を横に振るドゥーエちゃん。
でも、さっきの反応は明らかに知り合いって感じだったよな?
なんだろう。触れてはいけない何かがあるのだろうか。
「エルさん、この子どうするつもりなんですか?」
ユイが俺の隣に来る。
俺たちはそのまま並んでその場に座った。
「どうするって、寮監の人に言うと余計な疑いを掛けられそうだから、明後日までこの部屋に置いておくよ」
「そうですかー。じゃあ、お風呂とか食べ物とか大変ですね?」
確かに。
俺達は基本的に寮や学校の中にある食堂で食事をするけど、ドゥーエちゃんの分はどうすればいいんだろう。
「難しく考えることはありませんわ。わたくしたちの食べ物を分けてあげればいいだけの話ですし、お風呂だって誰も入っていない時間帯を見計らって入ればいいのですわ」
セカイに関節技を極めながら神奈崎が言う。
「ふーん。それじゃあ、ドゥーエちゃん関連は神奈崎に任せるよ」
「えっ!? わたくしですの!?」
「だってこの子を部屋に置いておくって言いだしたのは神奈崎だろ? 責任は取ってもらうよ。ドゥーエちゃん、君の世話はこのお姉さんがやってくれるから」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! こういうときこそ協力してですわね……!」
「あー、やっぱりエリート様に子守りは難しかったかー」
「……何ですって!? ふん、この子の面倒を見るくらい簡単ですわ。わたくしに任せておきなさい!」
神奈崎がセカイから手を離し、どこからか取り出した扇をバッ、と広げる。
案外扱いやすい奴だ……。
「ドゥーエちゃん、いつでもわたくしを頼って良くってよ!」
「わーいお姉ちゃん、好き!」
「嬉しいっ!」
ドゥーエちゃんを両手で抱きしめ、くるくる回る神奈崎。
こいつ、いつか悪い奴に騙されちゃうんじゃないのか? 大丈夫かな?




