その⑫
「なんかお姉ちゃん、あたしと同じ匂いがするね」
「同じ匂い?」
「うん。いい匂い」
「ふっふっふ。わたくしは由緒あるメーカーが作った最高級品の香水を使っていますから、いい匂いなのは当然ですわ!」
と、そのとき、ドアが開く音がした。
「ふーっ、さっぱりしたっす。やっぱり誰もいないお風呂はいいっすね! ……って! 誰っすかそのロリはっ!?」
そう言って部屋に戻って来たのは、風呂上がりで寝間着に着がえたセカイだ。
セカイは、ドゥーエちゃんを見た後、俺と神奈崎の顔を交互に見て、
「ま、まさか……二人のお子さんっすかぁ!?」
「そんなわけないだろっ!」
「え、えーと、子供が生まれるには男の人と女の人が――それで、逆算すると――で、出会って五秒で即合体どころじゃないっすよ!? ……ひでぶッ!?」
神奈崎に思い切り腹部を蹴られ、悶絶するセカイ。
「不潔ですわ」
のたうち回るセカイをまるでゴミを見るような目で見下す神奈崎。
「う、うう……今のは効いたっす……っ」
「ねえねえ、あんた誰なんだよ?」
ドゥーエちゃんが床に倒れるセカイの前にしゃがみ込み、その顔を人差し指でつつく。
「う、ウチは下井セカイ……変態という名の紳士っす」
「へー、セカイって言うんだ」
「う、うぅ……」
セカイは倒れたまま寝間着の袖から何かを取り出した。
それは一粒の種だった。
ドゥーエちゃんが不思議そうにその種を両手に乗せる。
そして、セカイが右手を振ると、ドゥーエちゃんの持っていた種が一輪の花に姿を変えた。
「わーっ、すごいんだよ!」
目を丸くしながら、ドゥーエちゃんが声を上げる。
「君のような可憐な女の子には綺麗な花こそ似合っているっす……これからはその花をウチだと思って大切にして欲しいっす……ガクッ」
「あっ、セカイが死んじゃったんだよ」
「いつものことだから気にしないでいいよ、ドゥーエちゃん」
セカイ――キザな真似しやがって。
今にして思えばいい奴だった。男か女かは分からなかったけど。
俺はお前のこと忘れないぜ。多分、明後日くらいまでは……。
「って、勝手に殺すなッッ! ……っす!」
「なんだセカイ、生きてたのか」
「生きてたのかじゃないっすよ! 生きてるっすよ!」
「神奈崎、まだ生きてるって」
「あらそう。じゃあちゃんととどめを刺さなきゃいけませんわね」
「あっ、ちょ、ちょっと神奈崎さん!? ウチの両足を持ってどうするつもりっすか!? まさかそのまま逆方向に折り曲げ――あ痛たたたたたっ!」
しかし、それにしてもドゥーエちゃんの言うお兄様って誰なんだろう?
そして、どうしてこんなところに来たんだろう?
……謎だ。




