その⑪
斬沢先生のところへ行こうとした俺の袖を誰かが掴んだ。
振り返ると、その誰かはドゥーエちゃんだった。
「エルくん、人を呼ぶのはやめてほしいんだよ」
「どうしてさ。君、迷子だろ? 早く帰らないと家の人も心配するんじゃないの?」
昔、森で遊んでいて帰るのが遅くなった時、おばさんにめちゃくちゃ怒られたなあ。
……今となっては大切な思い出だ。
「それは大丈夫なんだよ。あたしのことを心配する人なんていないから。それに、あたしもう少しここに居たいんだよ」
「そんなこと言われてもなぁ……」
困った。どうしよう。
やっぱり誰か大人に相談すべきだろうか。
「むしろ、あたしが見つかると大変なんだよ。この寮、勝手に入っちゃだめって聞いたことあるんだよ。だから、もしあたしがこの部屋で見つかったってわかったら、エルくんたちも勝手に人を入れたって疑われるんだよ」
「え?」
「それに、今ここであたしが大声を上げたらきっと誰かがここへ来るんだよ。そして、エルくんが幼女を部屋に連れ込んでいる事実が発覚しちゃうんだよ」
「いやちょっと待て、その理屈はおかしい」
「おかしくないんだよ。あたしみたいにカワイー女の子は庇護の対象になって当然なんだよ。そして糾弾を受けるのはエルくんみたいに性欲を持て余す思春期男子なんだよ」
「だ、誰が性欲を持て余してるって!?」
このガキ、口だけはやたら達者だ。
親の顔が見てみたい。その、お兄様とかいう人の顔も。
「……真白、そのくらいにしておきなさい。この子、今晩くらい部屋に泊めてあげても良いじゃない」
そう言って俺達の間に割って入って来たのは神奈崎だ。
「え、そんなことしていいの!?」
「わーい、お姉ちゃん大好きなんだよ!」
神奈崎の胸に飛び込み、わざとらしく甘え始めるドゥーエちゃん。
「バレなければいいのですわ。それに、明日まで休日でしょう? 寮監の先生くらいしか校内には残っていませんわ。斬沢先生には明後日申し上げれば良いでしょう?」
「寮監の人に言えばいいのでは……」
「ドゥーエちゃんの言う通り、わたくしたちがこの子を部屋に上げたと思われるのは心外ですわ。それに、ここがここに居たいと言っているのだから居させてあげればいいじゃない。ね、ドゥーエちゃん」
「わーい、ありがとうお姉ちゃん!」
ドゥーエちゃんが神奈崎の胸に顔をうずめる。
それなりのボリュームのある胸に。
家が金持ちというだけのことはあって、発育環境がよかったのだろう。
…………。
……やっぱり俺、性欲を持て余しているのかもしれない。思春期だし。
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