その⑦
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その後、体調の回復したユイとセカイと共に、首都観光は無事に終わった。
神奈崎の言う通り観光名所は多く、特にかつて王国だったころ使われていたという宮殿は圧巻だった。
とはいっても、この共和国が出来た時の内戦で本物の宮殿は半壊したとかで、現在あるのは再建されたものらしいれど。
夕方になり再び寮に戻って来た俺たちは、羅留場さんに別れを告げて部屋に戻ることになった。
「なんか最初辺りの記憶がないんだけど、すっごく楽しかったですね!」
ユイが背伸びをしながら言う。
「当たり前ですわ。誰がプランニングした観光旅行だと思っていらっしゃるの?」
得意げな顔をする神奈崎。
だけど、確かに今日のことに関しては素直に感謝しておこう。
「ありがとう、神奈崎」
俺が言うと、神奈崎は驚いたように、
「きゅっ、急に何をおっしゃってるのですわ!?」
「いや、だから、神奈崎が計画を立ててくれたおかげで楽しかったよ。俺、こんな風に大勢でどこかへ行くのなんて初めてだったし」
「ふ、ふん。普段から目も当てられないような暮らしをしている庶民にエリートととはなんたるかを教えてやっただけですわ。感謝されるようなことでもありませんのよ」
「口元、緩んでるけど」
「!」
神奈崎が凄いスピードで口元を押さえる。
そして顔を真っ赤にしながら、
「こ、こんなの慈善事業みたいなものですわっ! 別にわたくしは、楽しくなんてなかったのですわっ!」
「えーっ!? 神奈崎さん楽しくなかったんですか!?」
驚愕の表情を浮かべるユイ。
それを見て、神奈崎が慌てる。
「そ、そんなことは、えーと、だからですわね、えっと……」
言葉を探すように、神奈崎は目をきょろきょろさせた。
そして、言うべきことが見つかったのか、自分を落ち着かせるように咳払いをして、
「ま、まあ、わたくしも楽しかったですわよ。あなたたちがまた連れて行って欲しいというのなら、望みをかなえてあげなくもないですわ」
照れたように神奈崎が言った。
本当、素直じゃない奴だ。
「わーい! さすが神奈崎さん! 一生仲良くしましょう!」
ユイが神奈崎の両手を握る。
「い、一生仲良く!? そ、それは生涯の伴侶ということですの!?」
「一生のお友達です!」
「お友達……」
一瞬、呆気にとられたような顔をした神奈崎は、すぐに満面の笑みを浮かべた。
「ええ、お友達ですわ!」
その笑顔は、言い古された言い方かもしれないけれど、大輪の花が咲いたみたいだった。
こいつ、こんな顔するんだ。
なんか意外だ。




