その②
「いやー、すごいね。初めてここまでできるなら大したものだよ!」
「そ、そうかな? おばさんの教え方が良かったんだよ」
「……おばさん?」
ニィおばさんの目つきが鋭くなる。
ぼくは慌てて言い直した。
「お姉さんが上手に教えてくれたおかげだよ」
「そうそう。あたしも気分がいいんだよ。今夜はお風呂一緒に入る?」
「な、何言ってんだよ。ぼくだってもう十五なんだからいい加減恥ずかしいって」
「なんだよー、色気づいちゃってさ。あたしの悩殺ボディを披露してあげようと思ったのに」
「そんなこと言ったってニィおばさん、胸が……あいたたたた冗談冗談、貧乳なんて言ってないから、頬っぺた引っ張るのやめてって!」
「まったく、どこで貧乳なんて言葉を覚えたの?」
ようやくおばさんが僕の頬から手を放す。
まだ少し痛い。手加減してくれたっていいのに。
「それよりおば――お姉さん。次は? ほかに魔法はないの?」
「イメージを具現化するのが魔法なんだから、今ので基礎は終わり。あとはエル君の練習次第なんだよ」
「ふーん、そうか。いつかおばさんみたいに魔法が使えるようになるかな?」
ぼくが言うと、ニィおばさんは笑いながら、
「エル君の方がきっと才能があるんだから、練習すれば絶対できるようになるんだよ」
「本当?」
「本当だよ。さ、そろそろ小屋に戻ろうか。おやつの時間だよ」
「えー? もう少し練習したいんだけど」
「最初からあんまり飛ばしすぎると疲れちゃうんだよ。あんまり真面目にやらずに、とりあえず休憩するのが一番!」
おばさんはぼくに背を向け、小屋の方へ歩き出そうとした。
だけど、何かに気付いたように足を止めた。
「?」
よく見ると、小屋の前に人影があった。
「やあ、二人とも。元気にしていたかな?」
人影は片手を挙げて、気さくな様子で僕らに近づいて来る。
ぼくは彼のことを知っていた。
「真白さん!」
「おお、エル君。しばらく会わない間に大きくなったねえ」
「先週会ったばかりですよ?」
「あれ、そうだったっけ? まあいいさ。今日はちょっと話したいことがあって来たんだ」
「話したいこと?」
真白さんの言葉にニィおばさんは一瞬不安そうな顔をしたが、すぐにいつもの笑顔に戻って、
「ちょうどよかった、今からお茶の時間にしようと思ってたんだよ。真白さんも上がって」
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