その⑰
「ど、どうして君たちが……!?」
俺が呆気に取られていると、
「エルさんもこの部屋なんですか! 良かったー、知らない人たちばかりだったらどうしようかと思ってたんですよ!」
「庶民臭いと思ったらあなたでしたの? 全く、最悪極まりませんわ」
と、それぞれの反応をしながら彼女たちは荷物を片付け始めた。
「ちょっと待ってよ! 男女同室で良いの!? 何かの間違いじゃないの!?」
「今更何言ってんすか、真白のアニキ」
「真白のアニキ!? 俺のこと!?」
俺の背中に手を置きながらセカイが言う。
「Bクラスから個室がもらえるんすけど、ウチらEクラスは相部屋で雑魚寝っす。基本は男女別らしいんすけど、きっと数が合わなかったっすね」
「いやいや、数が合わないからって……」
俺の言葉を遮るように、セカイは背伸びをしながら俺の耳元で囁いた。
「真白のアニキ、野暮なことは言っちゃダメっすよ。女の子と同室なんてウチらはラッキーっす。ラッキースケベ狙い放題っす」
うっしっし、とゲスな笑いを浮かべるセカイ。
「ら、ラッキースケベねえ」
そんな幸せな雰囲気になるのだろうか。
果てしなく不安だ。
やれやれ、と俺は壁に手をついた。
その瞬間、俺の手に触れていた部分の壁の板が折れ、壁に穴が開いた。
「え!?」
「さすがアニキ! やっぱヤンキーと言えば壁に穴をあける生き物っすよね!」
「ち、違うんだ! 木材が腐ってたんだよ! ほら!」
「やはり庶民、野蛮ですわ……」
「え、エルさん、何か嫌なことでもあったんですか?」
憐れみと蔑みの視線に晒される俺。
……またやってしまった。
「だから誤解だって!」
ええい仕方ない、ここは魔法で。
俺は壁に張り付く板のイメージを魔力の流れに乗せた。
一瞬後、壁に開いた穴は木の板で塞がれていた。
「ほら、直っただろ!」
「ここからここまではわたくしのスペースですわ! ほら庶民、手伝いなさい! しっかり働いたらご褒美をあげますわ!」
「は、はいっす! ご褒美……ハァハァ」
「…………」
俺が振り返った時、既に彼女たちは別の作業を始めていた。
俺、ちょっと悲しい。
「あ、えーとエルさん、一応私は見てましたよ。すごいです」
「ありがとうユイ。そう言ってくれるのはユイだけだよ」
こんな感じで、俺の魔導学園生活はスタートしたのだった。ちゃんちゃん。
※
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