その⑬
「チッ、どいつもこいつもシケた面してやがりますわね。さすがEクラス」
そんなことを言いつつ俺の隣に座って来たのは、やはりというべきか神奈崎だった。
「さっきの今でいきなり口悪いね、神奈崎さん……」
「そんな気持ちにもなりますわ。ところであなた、怪我は大丈夫?」
「え?」
俺が聞き返すと、神奈崎は顔を赤くして、
「で、ですから、怪我は大丈夫なのと訊いているのですわ! 出血もひどかったようですし」
「心配してくれるの?」
「ま、まさか。わたくしの魔法で死人が出たら寝覚めが悪いと思っただけですわっ!」
神奈崎はそう言ったきり向こうを向いてしまった。
たとえ誰かを殺したとしても父親がなんとかしてくれるんじゃなかったのか……とは言わなかった。
優しさ、というやつだ。
「そろそろ入学式、始まりますよ!」
ユイが俺に囁いたのを合図にしたように、三階席まであるようなやたら広い式典会場の照明がゆっくりと暗くなり始めた。
※
どうして大人は話が長いんだろう……?
さすが国に一つしかない魔法の学校というだけあって、長ったらしい肩書を持つ人たちが何人も来賓として招かれていた。そして彼らは代わる代わる壇上に立ち、そして同じような話を延々と繰り返した。
ある種の拷問に近かった。Eクラスの生徒の半数近くが途中から眠っていたような気がする。さすがEクラスだ。
ただ、唯一この学園の校長である、ミシア・フォン・ハルフォードという女の人の話はほんの一言で終わった。
彼女は壇上に上がるなり、
「皆さんには期待しています。頑張ってください」
とだけ言って、再び壇上から降りたのだった。
このミシアという人、この国の大統領をしていた人らしい。ユイが教えてくれた。
あと、入学式中に起こったことと言えば――実は俺も三分の一くらいは寝ていたからよく覚えていないのだけれど――入学者代表の挨拶でスピーチを行ったAクラスの子がまあまあ可愛かったくらいだ。確か名前は、斬沢アオとか言ったっけ? 青白いロングヘアでスタイルがめちゃくちゃよかった。遠くから見ただけだから顔はよく分からなかったけれど、それなりに整っているようにも見えた。
まあ、かかわることは一生無いと思うけど。
入学式が終わると、俺たちはそのまま俺たちの教室へと向かった。
※




