その⑪
魔導学園?
初めて聞く名前だ。
……いや、初めてではない。
確か、真白さんがニィおばさんと話しているときに出て来た言葉だ。
「仰る意味がまだ分かりません。魔導学園って何ですか?」
「その名前の通り、魔法を勉強するところだよ。君もあの子に少しくらいは習っただろう?」
「習いはしましたが。あとは自分で練習しろって言われましたよ」
そして、俺が無意味に魔法を使ったせいでニィおばさんは……。
俺は無意識の内に手を強く握りしめていた。気がつけば、爪が掌に突き刺さり血が滲んでいた。
「自分で練習か」
「はい」
「まあ、平和に使う魔法ならそれで良いかもしれないけど、君は魔法で人を殺せるようになりたい――だろ?」
人殺し。
畑に植物を生やしたり、家事に使ったりするのではなく、何者かの命を奪うための魔法。
「そのための訓練をしてくれるのが魔導学園というわけですか」
「君にとってはそうだ、と言わせてもらおう。もちろんこの平和な世の中で――言い直そう。この国で暮らす大多数の人間にとって平和なこの世の中で人殺しの技術なんかを表立って教える機関はないさ。だから、本当は、魔法の素質を持つ人間を訓練し、国が一元管理するための施設なんだけど、そういう説明は求めていないだろ?」
「つまり、俺は魔導学園に行って魔法を学んだ方がいいってことですね?」
「どうしてボクに聞くんだい? それを決めるのは君じゃないか。決定権は君にないと公平じゃないだろ」
……この人、案外面倒くさい人なのかもしれない。
どちらにせよ俺のやるべきことは一つだ。
「俺は魔導学園に行きます」
真白さんが頷く。
「ボクもそれが良いと思う。さ、話はこの辺りで一度切り上げよう。エル君も空腹だろ? 食事を用意しよう。入学手続きや試験の準備もしないといけない。少し忙しくなるぞ。覚悟はいいかい?」
覚悟なんてわざわざ決める必要もない。
俺は昨晩、死線を潜り抜けた。
目の前で大切な人が死んだ。
あれ以上の苦痛が今すぐ襲ってくるとは思わない。
「ニィおばさんの仇を討つためなら、俺は何だってしますよ」
※
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これにて第壱話が完結です!
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