その⑨
「ええと……」
何から尋ねればいいだろう。
質問はいくつも思い浮かぶ。
だけど、どの質問もはっきりした言葉で表すことができない。
「まだ昨日のことだから、心の整理がつかないかな?」
「そんなことはありません。あの……ニィおばさんはどうなったんですか?」
最初にぼくの口をついて出た質問はそれだった。
答えなんて分かりきっていた。
それなのに言葉にしてしまったのは、そんなぼくの予想を否定してもらいたかったからだろう。
真白さんは一瞬言い淀んで、それからぼくの顔を正面から見つめながら言った。
「彼女はまだ見つかっていない」
「見つかって――いない?」
「だからまだ死んだとも言い切れない。もっとも、生きている可能性は低いだろうけどね」
「そう、ですか……」
だけどぼくは、おばさんの体が引き裂かれた瞬間をはっきり記憶している。
判別がつかないくらいバラバラになってしまったのなら見つからないのも当然だろう。
おばさんは死んだ。間違いなく、僕の目の前で。
「次の質問は?」
真白さんの声にぼくは我に返った。
「は、はい。ええと、昨日ぼくらを襲ったのは何者なんですか?」
「その話をするには、君の両親のことを少し話さないといけない」
「ぼくの両親……」
そういえば、襲撃者もぼくの両親が原因だと言っていた。
ぼくをニィおばさんに預けたきり二度と会いに来なかった両親。
「彼らの消息については、不明だ」
「不明? 死んだんですか?」
顔も覚えていないのだから、そんな人たちが死んだとしても別にどうとも思わないけど。
「それさえも分からない。だけどね、昨晩の襲撃者は君の両親に強い恨みを持った組織の一員なんだ。彼らの組織のことを、ボクは『彼岸』と呼んでいる」
「彼岸?」
「かつてこの国は、強力な力を持つ王と軍部が治める国だった。それが、十数年前に滅びて今の国――魔導共和国が出来たんだけどね。かれら『彼岸』はかつての軍部の残党なんだよ。そして、君の両親はかつての王国が壊滅した原因の一つを作った存在でもある」
「ぼくの両親が、そんなことをしたんですか?」
「そうだ。そしてその後行方を晦ました。『彼岸』の連中は君の両親を恨んでいるんだよ。そして昨日の襲撃事件が起こったというわけさ」




