気がついたら意識なくて周りに人が血だらけ倒れてた
もうダメかもしれなかった。
もう死ぬかもしれなかった。
住んでいた小屋はその周囲の雑木林ごと炎に包まれ、夜の空を照らしている。
ぼくを今まで育ててくれた人も恐らく死んでしまっただろう。
何よりぼくは、あの人が背中から撃ち抜かれたのを見たのだ。あの人の血にまみれた手が僕の頬を触った瞬間を覚えているのだ。あの、生暖かい血の感触と一緒に。
襲撃者の一群は突如として表れ、ぼくらの暮らしを破壊した。
一体何が目的なのだろう。ぼくには分からない。ただ、彼らがぼくらを殺そうとしていること以外は。
逃げるんだよ、とあの人は言った。
幼い頃両親に棄てられたぼくを今まで育ててくれたあの人は、襲撃者の攻撃をその一身で受け止め、そう言ったのだ。
だからぼくは逃げている。
どこまで逃げればいいかなんて、当然知らない。
だけどこのままここにいれば、あの集団は必ずぼくを見つけ出し、今度こそぼくを殺すだろう。
「!」
ぼくは思わず転んでいた。
木の根元に躓いたらしい。
転んだ時に、ひどく膝を打った。動かすたびに痛む。
でも、逃げなければ。
ぼくは立ち上がろうとした。
が、同時に右肩に激痛と衝撃が走り、再び地面に叩きつけられた。
今まで感じたことのないような鋭く熱い痛みと共に、右肩より先の感覚がなくなった。
恐る恐るそちらを見てみると、僕の右肩はまるで金槌か何かで打ち砕かれたようにぐちゃぐちゃになっていて、露出した骨が月明かりに照らされた。
その先の右腕は糸の切れた人形のようにぶら下がっているだけで指先一つ動かせない。
「あ、ああ……!?」
どうして?
どうしてぼくがこんな目に?
地面がやけに冷たかった。
目の前がぼやけて、涙らしいものがあふれた。
ぼくが動けなくなっているのを見越したように複数の足音が近づいて来る。
全身を黒い装甲で覆った、襲撃者たちだ。
その右手には棒状の武器が握られている。恐らく僕の肩はあれで狙撃されたのだろう。
「目標を確認。これより排除に移る」
襲撃者の一人が、誰かに報告するように言う。
それを合図に、襲撃者たちは棒状の武器を一斉に僕めがけて構えた。
ダメだ、動かなければ死ぬ。
それなのに体は言うことを聞かない。力が入らない。
相変わらず右肩は焼けるように熱く、そこからとめどなく血が流れだしているのが分かる。
「ど、どうして……どうしてぼくらを……」
震える唇で、ぼくは何とか言葉を絞り出した。
すると、襲撃者が一人、武器を構えたまま僕に近づいてきて、言った。
「すべてはお前の両親が原因だ。恨むなら奴らを恨むんだな」
両親?
顔も忘れてしまった、ぼくの両親?
あの人たちのせいで、ぼくらは殺されようとしているのか?
ぼくらはただ、森の奥で静かに暮らしていただけなのに?
「ぼくが……」
「全員、構え」
襲撃者たちはぼくへ向けて武器を構え直す。
だけど今は、そんなこと関係なかった。
ぼくの心の中に、黒くてドロッとしたものが生まれるのを感じた。
「ぼくが、何かいけないことでもやったのか?」
襲撃者たちの武器が一斉に火を噴いた。
血が熱い。
その瞬間、ぼくは意識を失った。
そしてぼくが再び目覚めた時、襲撃者たちはただの血と肉の塊となって、ぼくの周囲に散らばっていた。