スーパー星の王子様Ⅱターボ
僕が王子様と会ったのは砂漠の上でした。
僕は飛行機に乗って夜間遊泳をしていたのですが、不時着してしまったのです。
僕は一生懸命レンチで飛行機のボルトを回していました。早くしないと食糧は一週間で尽きてしまうのです。
そんな時、背後でとてもかわいい声がしました。
「羊の絵を描いてよ。」
そこにいたのはとても可愛い男の子でした。
「今なんて?」
「羊の絵を描いてよ。」
「君は一体誰なんだい?」
「羊の絵を描いてよ。」
男の子は僕の質問には答えてくれません。
人間にはどうしても断れなくなる時がたまにあります。今がその時なのです。
僕は鉛筆と紙を用意して羊の絵を描いてあげました。
「これでどうかな?」
「だめだよ。絵の厚みが全然足りないよ。えてして駆け出しの画家がはまりがちな個性の押し付けという愚行を君はなぞっているにすぎないよ。こんなのは紙屑同然だよ。鑑賞者に強い余韻を残せるような作品作りを本気でやろうとしているのか甚だ疑問を呈さざるを得ないよ。」
男の子は無表情でそう言いました。僕は笑顔で羊の絵を破りすてました。
「これでどうかな?」
「だめだよ。奥行きを深みを全く感じないよ。これでは多めに見ても及第点にも及ばない。よしんばこれが展覧会に出されていたら僕は博物館ごと火炎放射器で焼き払っている所だったよ。絵っていうのはね余韻なんだよ。君の中にあるイマジネーションが余韻を通してキャンバスに投影された時、本当の余韻が余韻を残していくんだよ。」
男の子は無表情でそう言いました。僕は笑顔で羊の絵を破りすてました。
「君の言う余韻っていうのはなんだい?」
「・・・・・・」
男の子は下をうつむいて答えませんでした。彼には「答えなくてはならない」というルールは通用しないのです。
それからしばらくし僕は一人で飛行機をなおしていました。
すると男の子はそばにきて言うのです。
「お風呂のしつこい汚れが落ちないんだ。」
「今飛行機直してるから後にしてくれない?」
「赤い汚れの方はね、バスマジックリンで落ちるんだけど、黒い汚れの方はね、バスマジックリンはおろか、カビキラーを使っても落ちないんだ。」
「今飛行機直してるから後にしてくれない?」
「漂白剤を使った方がいいのかな?洗濯用の弱い漂白剤を使った方がいい?それとも100均で買ったすごい強い漂白剤使った方がいいと思う?でもこれはこれとして最終兵器として温存しておきたい気持ちもなくはないんだけど・・・・・」
「・・・・・・両方使えばいいんじゃないかな・・・・・」
しばらくするとまた男の子はやってきました。
「君は今の飛行機乗りの仕事で満足?」
「今飛行機直してるから後にしてくれない?」
すると男の子は泣きじゃくりながら激怒しました。
「君はそんなくだらないことのために僕の話を無視するの?君はそんな大人なの?俗物なの?修正されたいの?」
「いや、飛行機なおさないと帰れないし・・・」
「そんなことどうだっていいことだよ!!どうせ帰ったってショボいワンルームのマンションに住んでるんでしょ?オートロックついてないんでしょ?そんなの砂漠と一緒だよ。それよりネットワークビジネスとか興味ない?」
「いや別に・・・」
「だから不時着するんだよ。ネットワークビジネスやってる人は不時着しないもん。むしろ逆にたいがいの僕の仲間たちは空自分で飛べるよ?アムウェイのおかげで。僕はアムウェイやってないけどあれはあれで凄いと思う。ビジョンがあるし。みんな夢持って着実にお互い高めあってるんだよ。君は今の仕事で本当に満足?今のままじゃ搾取されだけだと思うよ。お金に働かせられるんじゃなくて、お金に働いてもらわないとだめだよ。」
「いやそういうのはちょっと・・・」
「今度僕の師匠を紹介するよ。彼はね若いのに自分のビジョンを持って独立しようとしているんだ。彼がね、ロバート・ケワサキって人のリッチファザー、プアーファザーって本を紹介してくれてね。これがお金のことを一から学べる目から鱗の本なんだよ。今まで僕達がどれだけ搾取されてきたのかが分かるんだ。これを読んで僕は改心したんだ。後関係ないけどラッセンの絵買わない?」
「買わないよ!ってか君は誰?」
「僕は星の王子様だよ。」
「星の王子様・・・・て何?」
「星の王子様・・・・・それは・・・・・概念。」
「概念?」
「そう概念。全ては余韻で始まり余韻で終わる。」
「さっきから余韻、余韻って何?」
「余韻ってのは・・・こう・・・全体的にこう、グワーッって頑張っていこうっていう気持ち・・かな。」
「??????」
「ともかく君には余韻が足りないんだよ!!もっと余韻出していこうっていう気合みたいな心いきが足りない。もっと全体的に余韻出していけば飛行機も飛ぶはずなんんだ。君が今こうなっているのも食らいついてでも余韻出していこうっていう不屈の意志がないからなんだよ。自業自得だよ。それとラッセンの絵買わない?」
「買わないよ。・・・ともかく僕は飛行機を飛ばさなければいけないんだ。何でもいいから助けてくれないか?」
「まず僕のメルマガに登録して。月額3万だけど必ず結果につながるメソッドが書いてあるから。最初は地道にアフィリエイトで稼いでいこう。そこから水素水とかビットコインに手だしていけばいいから。それとラッセンの絵買わない?」
僕は結局メルマガに登録させれて、ラッセンの絵を買わされました。今度六本木のタワーマンションでIT社長が集まるセミナーに来ないかってメールが来たけどそれは無理でしょう。
なぜなら今だに飛行機は飛ばないし、食料は完全につきたからです。
あの素敵なおぼっちゃんはどこに行ったのでしょう。僕がメルマガに登録した瞬間にどこかへ消えました。